ヤンバルクイナの事故多発 前年超えの24件で「満床」状態に


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県道2号で見つかったヤンバルクイナの死骸=23日午前6時ごろ、国頭村(島袋武志さん提供)

 世界自然遺産に登録されたやんばる(沖縄島北部)でヤンバルクイナの交通事故が多発している。今年の交通事故は28日現在で24件が確認され、昨年1年間の22件を上回った。5羽が救命され、4羽が今も治療を受けている。骨折などの回復には時間がかかる上、野生に復帰できない個体もいる。病床は“満床”で関係者は悲鳴を上げている。

 事故は主に国頭村の県道2号、国頭村から東村にかけての県道70号で起きており、23日にも路上で新たな死骸が見つかった。現在死骸を確認中で交通事故と確認されれば25件目となる。国頭村安田区の島袋武志さんが同日午前6時頃、この死骸を発見した時には血は固まっておらず体も温かかったという。「死骸を見つけたのは今年2回目。多いと感じる」と危機感を示す。

 救命された4羽は現在、環境省の施設とNPO法人どうぶつたちの病院沖縄(うるま市)で治療を受けている。うち1羽は5月に事故に遭い、脊椎を損傷して立ち歩くことができなくなった。まひが残るためスタッフが排便をさせ、下半身のリハビリ中だが、どこまで回復するか分からない。以前に事故に遭った個体には、両足を切断されるなどして野生復帰が見込めない個体もいる。

 どうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆理事長は「スキルが蓄積して助けられるようにはなったが、クイナの寿命は10年以上あり、飼育場所が足りない」と新たな課題に直面している。車は走行速度を落とすなどの注意に加えて「ハイビームを点灯すると、鳥が車に気付いて事故が減るかもしれない」と呼び掛けた。今年の事故はケナガネズミが4件、ノグチゲラとアカヒゲも1件ずつ。ケナガネズミとアカヒゲはすべて死亡し、ノグチゲラは治療を受けている。

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