辺野古新基地で国がサンゴ移植を強行 許可翌日に沖縄県の条件ほご 県抗議、行政指導へ 


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 名護市辺野古の新基地建設で沖縄防衛局は29日、沖縄県から28日に許可を受けたサンゴ類約4万群体の移植作業に着手した。県は生残率を高めるため、高温期や繁殖期(5~10月ごろ)を避けることなどを条件に許可していたが、その条件をほごにし、作業を強行した。県への事前連絡もなく、玉城デニー知事は29日の会見で「許可を受けたから勝手にやってもいいと解釈したのは遺憾だ」と批判。県は30日以降、沖縄防衛局に抗議した上で条件を守るよう行政指導する考えだ。

 防衛局は29日、本紙の取材に「移植元でのサンゴ採取、運搬、移植先でのサンゴ固定作業を実施している」と答えた。県によると、防衛局は事前に移植作業の開始を知らせず、県が問い合わせたところ「(許可条件は)適切に守られている」と述べた。

 大浦湾に広がる軟弱地盤の改良工事について、防衛局が設計変更を県に申し出ているが、県は環境保全への悪影響を踏まえて8月中旬以降に不承認とする構えだ。その後、工事全体の完成が見通せないとして、サンゴ移植の許可も取り消すとみられる。

 県は28日、埋め立て予定区域とその周辺に存在する約4万群体の移植を沖縄防衛局に許可していた。条件として(1)サンゴの生残率を高めるために、水温の高い時期、繁殖の時期を避けるなど適切な時期を選定など(2)移植後おおむね1週間に1回の経過観察と県への報告―を求めていた。

 サンゴは水温が30度以上になると白化現象が顕著になるとされる。県は取材に「これから水温が上がる時期で、この時期の移植は適切ではない」と説明した。

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