【北部】世界自然遺産登録地に生息する、飛べない鳥ヤンバルクイナを捕食するとして、環境省などが防除事業を進めるマングースが、ノグチゲラやホントウアカヒゲといった飛べる鳥の生息域にも悪影響を与えていることが分かった。森林研究・整備機構森林総合研究所(茨城県)などの研究チームが明らかにした。同研究所の八木橋勉チーム長は「飛べる鳥が、ヤンバルクイナと同じほどの影響を受けてるのは意外な結果で驚いた」と話した。
ヤンバルクイナ、ノグチゲラ、ホントウアカヒゲの3種の生息域を特定するなどして、得られたデータを基に統計解析した結果、3種ともマングースが少なく、広葉樹林面積が広い地域に多く分布していることが判明した。マングースの存在は、広葉樹林の面積よりも3種の分布域に影響を与えていることも分かった。
マングースは地上性で木登りが下手とされる。これまで、空を飛べるノグチゲラとホントウアカヒゲの2種にヤンバルクイナほどの影響を及ぼすことはあまり想定されていなかった。一方、この2種も餌を食べるため地上で活動することもあり、その際にマングースに襲われた可能性があるという。
今回の研究では、3種の分布が回復傾向にあることも分かった。一方、防除が手薄な地域では今もマングースが多く生息しており、3種の分布はほとんど確認されていない。八木橋チーム長は「環境省や県の防除事業は成果を上げており、今回の自然遺産登録にもつながったのだろう」としつつ、「防除事業を継続しその区域を拡大する必要がある」と指摘した。
研究は独立行政法人環境再生保全機構の環境研究総合推進費などを活用。東北大学大学院や環境省も参加。調査は2007~16年にかけて3年ごとに4回実施した。仲間の鳴き声に呼応する鳥の性質を利用した「プレイバック法」で、3種の分布域を特定。それぞれの鳴き声を国頭、大宜味、東3村の森、約280カ所で流しその呼応を確認した。
論文は7月に発刊された国際科学誌「Biological Invasions」に掲載されており、オンライン上でも公開されている。
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