新型コロナウイルスの軽症者向けの宿泊療養施設の増設が進まず、自宅療養者が急増している。県は施設を増設できない理由として、看護師などの人員不足を理由に挙げる。深刻な感染拡大と医療逼迫(ひっぱく)で“医療崩壊”への危機感が強まる中、県と医師会が主導し、看護師の確保と宿泊療養施設の拡充などの対応が急がれる。
県によると、20日時点で県内の宿泊療養施設は那覇で2カ所、中部、名護、宮古、石垣に各1カ所の計6カ所、702室。ただ、消毒のため、稼働可能な室数はその半分程度にとどまっている。稼働数は看護師数にも左右されるという。
県は、中部の宿泊療養施設と入院待機ステーションの開設に伴う看護師など人員配置のため、那覇の3カ所の宿泊療養施設を2カ所に減らして対応している。
宿泊療養の対象者は原則は軽症者だが、病床不足で最近は酸素吸入が必要な中等症の患者も入所する。独居や高齢者と同居している人や、基礎疾患があり自宅での管理が難しい人に勧める場合もあるという。
おおむね県内全域で部屋は埋まっており、対象の全員が入所できる状況ではない。20日時点で入所待機者は148人に上り、待機者は自宅療養せざるを得ない状況となっている。
宿泊療養施設の増設へ向け、県が宿泊療養施設として契約を希望するホテルを公募したところ、20件以上の応募があったという。
21年度一般会計第12次補正予算に宿泊療養施設を700室程度、新たに確保する費用を盛り込んだ。19日に予算案は可決されたことから、糸数公医療技監は「予算と人の条件がそろえば拡充していきたい」と述べ、引き続き看護協会などと連携し、人員確保に取り組む考えを示した。
自宅療養者の急増を巡っては、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が12日、都道府県に対し、地元の医師会に積極的な関与を促し、宿泊療養施設を早急に増設することなどを要請した。「救える命が救えなくなる状況になり始めている」と強い危機感を示した。沖縄など緊急事態宣言地域については「これまで新型コロナに関わってこなかった医療従事者や医療機関も果たすべき役割を認識の上、対策に携わること」を求めている。
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