【深掘り】強めた知事批判…なぜ県議会議長は与党を離脱したのか


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県議会棟

 県議会与党の「会派おきなわ」から県議会議長の赤嶺昇氏が離れ、中立の立場となった。県議会与党の勢力が後退する形となるが、赤嶺氏は玉城デニー知事への批判をエスカレートさせてきただけに、与党内には冷静な受け止めが広がる。赤嶺氏が野党・中立勢力の中でどう存在感を発揮していくかに注目が集まる。

 新型コロナウイルスの感染者増加と軌を一にするように、赤嶺氏は知事批判のトーンを上げてきた。4月のうるま市長選では知事を支える「オール沖縄」勢力の相手候補を会派推薦した上で、玉城県政を念頭に「コロナは人災だ」と批判を強めた。5月には自民、公明両会派とともに知事に新型コロナ対策本部長から退くよう求めた。

 こうした言動を重ねてきた赤嶺氏の与党離脱に、与党幹部の一人は「当然だろう。いつになるのかと思っていたところだ」と皮肉った。別の幹部も「実態はすでに離れていた。与党の構図が整理された」と淡々と語る。

 赤嶺氏の会派おきなわからの離脱は、与党会派再編の動きがあった県議会6月定例会前から検討が進んでいた。知事批判を重ねる赤嶺氏と「会派おきなわ」の平良昭一氏、新垣光栄氏の切り離しを求める声が議会内外で高まったためだ。

 来年の知事選を見据えて与党の結束を強めるため6月議会前から断続的に調整が続く「おきなわ」と他与党会派との合流に向けた議論の加速化も予想される。与党幹部は「赤嶺氏の離脱を契機に、与党会派が足並みをそろえる形をつくりたい」と期待を寄せた。

 一方で、野党の自民幹部の一人は「知事の采配に見切りを付けての判断。議長なので採決にはあまり影響がないとは言え、基本的には歓迎だ。今後の選挙でもこちら側で頑張ってくれるだろう」と野党・中立勢力の拡大を喜ぶ。

 「オール沖縄」勢に対抗する保守中道系として、来年の知事選や参院選の候補者としても時折名前が浮上する赤嶺氏。自民幹部は「今は選択肢にはない。与党を抜けたからといってすぐに候補に挙がるものでもないだろう」と否定的だ。別の自民関係者は「めぼしい候補者がいるわけでもない。担ぎやすい環境は整ったのではないか」と秋波を送った。

(大嶺雅俊)

 


 

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