小麦、大豆、牛肉、油脂類…値上げの秋 業者苦境 輸送費も高騰、出費かさむ


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米国産のランプ肉を焼き上げるスタッフ=29日、那覇市のジャンボステーキハンズ松山店

 10月から暮らしや生活に関わる一部の商品やサービスの価格が上がる。原材料や輸送コストの上昇など複数の要因が重なり、食品の値上げも相次ぐ。小麦や大豆などの価格高騰に伴い、“県民食”である沖縄そばや島豆腐の製造業者をはじめ、輸入牛肉を使うステーキ店でも出費がかさみ、厳しい経営を迫られている。一方、新型コロナウイルス禍で収入が減った世帯も少なくなく、家計にとっても一層の打撃となりそうだ。

 「輸入牛肉の価格高騰は天井知らず。コロナにより時短営業や顧客の減少があり、人件費も上昇する中、原材料の値上げでどこの店も経営は火の車だ」。沖縄ステーキ地域ブランド推進協議会「COOKS」の義元大蔵副会長(ディーズプランニング代表)は、業界全体の窮状を訴える。県内ステーキ店の多くが米国産牛肉を扱う中、数年前から輸入牛の中でも特に米国産の価格上昇は顕著で、昨年から4割近く値上がりした部位もあるという。自身が経営する「やっぱりステーキ」も、9月から主要部位のミスジやランプ肉の値上げに踏み切った。

 義元副会長は「10月から緊急事態態宣言が解除され、県民や観光客の消費活動が再開することだけがせめてもの救いだ。店内で熱々のステーキを食べ、心も体も沖縄も元気にしてほしい」と呼び掛けた。

 沖縄そばやパンの原料となる小麦の価格上昇も深刻だ。政府が買い付けた輸入小麦の売り渡し価格は、10月1日から19%引き上げられる。2008年4月以来の上げ幅で、コロナによって世界的に物流が停滞し、輸送コストが高騰したことなどが要因だ。

 オキコ(西原町)は主力となる製パンの価格は当面据え置くものの、和洋菓子については油脂類や鶏卵の価格上昇などを受け改定を検討する。担当者は「企業努力でコスト吸収したいところだが、年明け以降の価格維持は厳しい」と理解を求めた。

 自家製麺の沖縄そば専門店ゆうなみ(那覇市)も、価格高騰に頭を抱える。先月から食用油の価格も値上がりしたという。現時点で業者から小麦価格の値上げ通知はないものの、スタッフの杉村比呂志さんは「先行きは見通せない。高騰が続けば、そばの販売価格を見直す必要が出てくるかもしれない」と不安を口にした。

 大豆を主原料とする島豆腐も状況は同じだ。県豆腐油揚商工組合には、値上げを検討しているという業者からの相談が複数寄せられているという。

 小売り大手のサンエーも、10月からマーガリンやパスタなど一部取り扱い商品の値上げを予定している。担当者は「なるべく消費者の負担にならないよう配慮したい」と話した。イオン琉球は、小麦粉やコーヒーなど、プライベートブランド商品の一部について年内は価格を据え置く。担当者は「節約志向の高まりもある。各社同じだと思うが、できる限り企業努力を続けていく」と述べた。
  (当銘千絵)

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