【一覧表・市町村の軽石被害】船、観光、漁業…「海人が生活できない」


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厚さ約10センチで海面を覆う軽石=26日、国頭村の辺土名漁港
海面を覆う軽石で真っ暗になった水深約30センチの海中を泳ぐ魚(高辻浩之撮影)

 「ウミンチュが生活できない」―。軽石漂着に関する本紙の41市町村調査で、11市町村で漁港内に流れ込むなど漁業関係を中心に深刻な被害が出ていることが明らかになった。大量の軽石が広範囲にわたって漂着し、市町村や漁業関係者らは回収作業に頭を悩ませている。県や国に早期撤去作業や費用負担のほか、漁業者の生活補償を求める切実な声が上がった。また遊泳禁止のビーチも出ており、観光への影響も広がっている。

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 大宜味村では出漁した船がエンジンの不具合を起こして止まるトラブルが発生した。浜や川まで軽石が漂着。沖釣りの客も途絶えた。宮城功光村長は「海人(漁師)が生活できない状況になっている」と声を落とす。

 一方で村内の海岸では園芸用などのため軽石を袋詰めする人たちの姿も。宮城村長は「赤土防止対策やパイン栽培などで利用を検討している」と述べ、軽石対策の一つとして利活用する考えも示した。

 伊江村南東部の村営遊泳ビーチは、時間帯(潮流や干満)によって遊泳禁止にせざるを得ない状況だ。27日から民泊受け入れを再開したが、観光客らの遊泳に影響が出ている。

 座間味村は座間味島や阿嘉島などに軽石が漂着した。ダイビング船数隻がエンジンを冷やす冷却機に軽石が入り込む被害があったという。村担当者は「定期航路のフェリーと高速船などに影響が出ないだろうか」と心配そうに話した。

 渡嘉敷村では、漁船やプレジャーボートが出漁や業務の休止を余儀なくされている。

 うるま市や南城市ではモズクの養殖作業が始まっているが、一部の船が出港できていない状況だ。うるま市はトン袋を各漁港に配布し、漁業関係者が各自で撤去作業をしている。

 那覇市では、エンジントラブルを避けるため出漁を控える漁業者も。那覇市沿岸漁協の仲里司参事は「12月~5月がソデイカのシーズンだが、1シーズン操業できないと廃業する漁業者も出てくるだろう。ソデイカの漁場は大東島より東側なので、広範囲の対策が必要になるかもしれない」との見方を示し、早期撤去を訴えた。一方、宮古・八重山地域への漂着は確認されておらず、竹富町は「必要に応じて本島の事例を参考に対応する」としている。

 各市町村から県や国への要望として、被害の大きかった国頭村や伊是名村、読谷村では、軽石の早期除去などを訴えた。今帰仁村は「災害扱い」としての対応を要望。本部町は「オイルフェンス設置など、漁にでられるようにしてほしい」とし、恩納村は「人体への影響がないことを含めた情報の周知」を求めた。糸満市や南城市は、軽石の除去費用の負担や、漁業者への生活補償などを挙げた。


 

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