軽石でモズク養殖中断 全国供給に影響も…国内生産の99%は沖縄


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漁場に出られないため、モズクタンクで作業をする男性。通常は種付けしたものを2週間程度、タンクで育て、海に設置する=28日、うるま市勝連の浜漁港

 【うるま・南城】大量の軽石の漂着に伴う被害が県内各地で続いている。県産モズクの養殖作業が滞り、うるま市の池味漁港では養殖スギ500匹が死んだことが28日までに分かった。県農林水産部は同日、国頭村の辺土名漁港で29日から撤去工事に着手すると発表した。うるま市のモズク養殖は、例年10月下旬から種付けを終えた網を海中に設置する作業が始まるが、船が出港できず滞っている。2月に収穫できるのか暗雲が立ちこめている。県産モズクは国内生産量99%を占めており、影響は全国に広がる恐れがある。

 モズクの一大産地のうるま市勝連地域。県内シェア約4割の生産量を誇る。モズクタンクが所狭しと並ぶ浜漁港では、28日、多くの漁師の姿があった。「従来は海に出てて、誰もいないはずだが…」。勝連漁業協同組合浜支部の上村直人支部長はため息をつく。

 これまでに11トン以上を除去し、27日も撤去したが、28日朝には港湾内に軽石が浮かぶ。本来は網の設置後に毎日漁場に出向き、モズクの成長を確認する。だが、出港がかなわず、「このままでは出荷できない事態になりかねない」と嘆く。

 県内第2位のモズク生産地である南城市でも漁師らが頭を抱える。志喜屋漁港のある漁師(44)は、海面に浮かぶ軽石を避けながら、漁場へ向かった。種付けを終えた網を海中に設置する作業は、船のエンジンをかけたままで行う。だが、エンジンを冷却するろ過装置に軽石が入るため、潜水作業を中断し、10分に1回は取り除く。「落ち着いて作業ができない」と疲労を隠せない様子だった。別の漁師は「モズクが採れなければ生活ができない」と不安そうに語り、国や県へ生活保障を求めた。

 県もずく養殖業振興協議会によると、2021年の生産量は1万9278トン。勝連漁協が8299トンで最も多く、続いて知念漁協が3148トンだった。


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