首里城が燃えた日から、31日で2年が経過する。関係者は「あの日」以来、再び首里城を建てるために議論、研究、検証を重ねてきた。焼失前の首里城は歴史的資料を一から集め、手探りの中で再建されたが、新しい首里城はその土台を利用しつつ、新たな知見も加えて生まれ変わる。今度の首里城は、焼失前の首里城のコピーではない。最新の防災機能を備えながら、琉球王朝時代の姿に、さらに近づく。
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国や県、方針に「見せる復興」掲げる
国と県は「見せる復興」をテーマに、首里城復旧・復元作業を進めている。2022年度から始まる正殿工事に伴い、施設跡地や御庭(うなー)には木材倉庫が設置されるため、北殿側の城壁沿いに全長110メートルの仮設デッキを新たに整備。10月末から一般開放し、再建に向けた作業の様子を見学できるようにした。また、資材の選定や調達過程なども広く知ってもらおうと、国の技術検討委員会内に設置された「木材・瓦類」や「彩色・彫刻」など各ワーキンググループ内での協議の進捗も随時公表する。
▲スライドすると倉庫など設置後のイメージを確認できます(※イメージ写真は沖縄総合事務局提供)
県は復元の基本方針に、県産材の積極的活用を掲げる。木材は、往事の首里城に使用されていたと推定されるイヌマキやオキナワウラジロガシの活用が望ましいが、これらは希少材で大量の調達が困難なため、外壁や国王専用の手すりなど象徴的な部分に優先的に使う。正殿の内壁や外部建具は代替材としてヒノキアスナロを活用する方針だ。
赤瓦はクチャと赤土に、瓦を粉砕したシャモットを配合する。県内製造業者に依頼している試作瓦の状況を踏まえ、今後、原土の配合比や強度、色味などの仕様を決定していく。
正殿の軒先に使われる丸瓦の文様については、今回の復元のコンセプトである18世紀後半~19世紀前半に合わせ、当時主流だった「赤瓦文様」を採用する。
前回の復元作業は主に県外の技術者が担うなど、伝統技術の活用と継承は、沖縄が長年抱えている課題の一つだ。今回は県内の技術力が向上したこともあり、塗装や彩色、彫刻工事に県内の技術者や職人を積極的に起用するほか、若手の人材育成の観点から、県立芸術大学などと連携を図り、長期的に首里城を管理していく方針も確認した。
再発防止へ 最新設備を導入
火災の発生で全焼した首里城正殿の防火対策は、ハード・ソフト両面で強化される。新たな正殿には「平成の復元」時にはなかった初期消火対応のスプリンクラーを設置する。火災発生時に火災報知機や監視カメラを設置していながらも出火場所を特定できなかったり、消防への通報が遅れたりした反省を踏まえ、新たに低照度監視カメラや火災報知設備の感知と同時に消防へ通報するシステムなど最新設備を導入する。防災面の構造的課題の解消に向け、首里城公園の指定管理制度の在り方にもメスが入る。
県の第三者委員会「首里城火災に係る再発防止検討委員会」が3月に公表した最終報告書では、立地や構造上の特性から、正殿を中心とした建物群は火災に弱かったにもかかわらず、関係機関にその認識は薄かったと結論付けた。特に人の少ない夜間に火災が発生する可能性はほとんど想定されていなかった。
首里城公園内は正殿などがある国営区域とそれ以外の県営区域で別々に指定管理者が選定されていることから、それぞれが独立して防災センターを有していた。火災発生時は国営と県営区域とも沖縄美ら島財団が指定管理者を務めていたが、双方の防災センターは連携不足で初期消火に遅れが生じた。
このため国と県は防災機能を統一し、司令塔役の職員を置くことを決めた。県は首里城の指定管理体制の在り方を検討する首里城公園管理体制構築検討委員会を2021年度に設置し、議論を進めている。再発防止検討委の委員からは他県の文化財の事例を参考にして、指定管理の対象から防災機能だけを外して行政管理にする案も上がる。
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