14歳「たくさんの牛を救いたい」 愛牛の死きっかけ「削蹄師」へ日々修業 うるま


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削蹄師見習いとして、修業に励む平良桃碧さんと闘勢琥珀(左)=うるま市石川伊波

 【うるま】うるま市立石川中2年の平良桃碧(とうあ)さん(14)は、牛の第二の心臓といわれるひづめの管理をする「牛削蹄師(ぎゅうさくていし)」を目指している。沖縄闘牛界で大活躍した愛牛の梨夢神(りむじん)の死がきっかけとなった。梨夢神はひづめから入った菌が全身に回り、2020年10月に13歳で死んだ。

 「沖縄の牛は爪の病気がほかの県よりも多いと聞く。たくさんの牛を救いたい」。はにかみながらも、力強く前を見据える。

 生まれて間もなく、平良家にやってきた梨夢神は2012年に大会デビューし、破竹の5連勝を飾った。半年ほど徳之島へ移籍したが、再び沖縄に戻り、18年には全島の中量級に挑戦。敗れはしたものの、25分の激闘を繰り広げた。「強かったけど、とにかく優しくて誰にも角を振ることがなかった」と平良さん。兄の梨夢さん(16)とともに世話をするのが日常だった。

 20年2月ごろ、牛舎に行くと、梨夢神が足を浮かし、一目で「何か変だ」と感じた。その後、体を支えきれなくなり、脱臼もした。検査で全身に菌が回っていることが分かり、なすすべもなく、10月に死んだ。

愛牛・梨夢神を散歩させる桃碧さん(右)と兄の梨夢さん=2013年7月(提供)

 今年5月、ほかの闘牛の削蹄で、牛舎を訪れた削蹄師の田中健大さんとの出会いが「人生を変えた」。削蹄後に、牛が歩く様子を見て、技術力の高さに圧倒された。「もしかしたら、梨夢神も助けられたのかもしれない」と思ったという。

 弟子入りを志願し、田中さんが運営する「田中IKEMEN削蹄」の見習いとして、18歳から受けられる削蹄師の資格試験に向けて、日々修業に励む。「実技は大丈夫と思うけど筆記が難しいんだよな」と語る。

 平良家には現在、梨夢神の子で、今年5月に全島王者になり、11月に防衛を果たした「闘勢琥珀(とうせいこはく)」がいる。琥珀の散歩前は、下見したコースで小石をよけ、空気を吹き出す「エアブロアー」をかけるほどの徹底ぶり。「爪は大事だから絶対けがさせたくない」と表情は真剣そのものだ。

 目下の目標は、一日でも早く一人前の削蹄師となり、沖縄の牛を病気やけがから救うこと。牛削蹄師は和牛、乳牛、闘牛を扱う。一方で、闘牛の削蹄には少し及び腰だという。「爪も硬いし、勝負にも影響するから、(師匠の)田中さんでも汗まみれになるぐらい難しい」と話し、「闘牛の削蹄師になれるかは分からないけど、とりあえずたくさん修業する」と笑った。

 (新垣若菜)
 

 

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