沖縄「10・10空襲」高校教科書にない…無差別攻撃も「なかったこと」に 文科省検定


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10・10空襲によって破壊される那覇の街 =1944年10月10日(沖縄県公文書館所蔵)

 文部科学省は29日、2023年度から高校生が使用する教科書の検定結果を公表した。「日本史B」に代わる新設の選択科目「日本史探究」の清水書院の教科書では、太平洋戦争時の空襲について「最初の無差別攻撃は、1945年3月10日未明におこなわれた東京大空襲」として、44年10月10日に沖縄であった10・10空襲を無視した記述があった。また検定に合格した5社7冊全てに10・10空襲の説明記述はない。沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)についても「軍命」を明記した教科書はなかった。 

 文科省は清水の空襲の記述について、同内容を記した歴史書籍が多数出ていることを理由に「誤りとは言えない」と回答した。検定意見は付かなかった。

 10・10空襲は、米軍が第5次攻撃にわたって本島と周辺離島に爆弾や焼夷(しょうい)弾を投下した。当時日本政府が「無差別攻撃」だと米政府に抗議した記録が米公文書に残されている。

 清水は誤った記述について、本紙の取材に応じなかった。

 また実教出版の2冊の教科書にある地図資料で、沖縄部分には「1944・10・10 那覇空襲」と記述した。「那覇空襲」の記述について実教は「10・10空襲という用語は教科書本文にも登場せず、やや専門的で高校生に覚えさせることが適切とは言い難い」と回答した。 21年3月に検定があった必修科目の「歴史総合」の教科書2冊には「那覇が空襲を受け、大きな被害を受けた」などの記述はあるが、詳しい説明はない。

 「日本史探究」ではその他に、実教でマリアナ諸島の陥落を「1945年」と誤表記した部分があった。正確には44年。第一学習社はひめゆり学徒隊を「学徒看護隊」と表記。関係者は「一緒になって戦闘に参加したように誤解される」と修正を求めた。
 (嘉数陽、安里洋輔)

▼10・10空襲とは?沖縄戦事典で調べてみよう

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