ヘアアイロンで癖毛直しは校則違反? 黒染め、散髪繰り返し…沖縄の県立高校、校則の実情


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県教育委員会が2021年12月1日付で県立高校に通知した、「地毛証明書の廃止」と「校則の見直し」を求めた文書の一部

 沖縄県教育委員会は昨年12月1日付で、地毛証明書の廃止を県立高校に通知した。通知には「時代の進展などを踏まえたものになっているか」「合理的な理由を明確に説明できるようにする」などと記し、校則の見直しも同時に求めるなど“ブラック校則”撤廃に向けてかじ取りを始めた。期待の声がある一方、「品行方正とはこうあるべきという、学校現場の凝り固まった考えが変わらない限り期待はできない」と諦めを口にする生徒や保護者もいる。

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 3月に県内中部の高校を卒業した女性(18)は、高校3年間、ヘアアイロンで焼けた髪色を指摘され続けた。染髪はしていないが、癖毛を真っすぐ伸ばすために中学からヘアアイロンを使用していたため、髪の一部が少し明るくなっていた。校則には「ドライヤーやヘアアイロンで髪色を変色させない」とあり、担任や生徒指導教諭に何度も黒染めや散髪を求められた。

 3年前の入学時、女性を含む何人かの生徒は、地毛証明書の提出を求められた。学校ではレベルスケールという、美容室や薬局などで使う髪の明るさを示すヘアカラーの見本を使って指導が行われていた。「証明書提出のときは何番だったよ。今の方が明るい。加工染めしているよね」と指導された。「黒染め買って持ってきたよ」と声を掛けられたこともあった。

 一度は指導に応じて髪を切ったが、後日、黒く染めるよう改めて指導を受けた。生徒の中には、指導による黒染めで髪が痛み、「また明るくなっている」と指摘されて黒染めを繰り返した生徒もいたという。

ヘアアイロンの繰り返しの使用で、すこし明るくなった髪。黒く染めるか、明るくなった部分を切るよう何度も指導を受けた(提供)

 生徒指導される度、「癖毛を真っすぐに直すことがなぜ許されないのか」「ヘアアイロンでの変色程度で、一体誰に迷惑をかけるのか。なぜ悪いのか」と教師に説明を求めたが、「校則だから」「あなただけ特別扱いする訳にはいかない」と繰り返すだけだった。保護者も学校に出向いて指導の意図を聞いたが、結局卒業するまで納得できる説明はなかった。

 女性と保護者は「外部の人が指摘しないと、校則は変わらないと思う」と話す。指導する側と受ける側の関係では、その後の影響を懸念して声を上げづらい人が多い。兄弟が通い続けることもある。女性が通っていた学校には今、妹が通学している。保護者は「時間が掛かると思うけど、お互い納得できるものになってほしい。今のところ希望は持てないけど」と苦笑いした。

 県教委は昨年12月に県立高校に出した通知で、校則を「絶えず積極的に見直す必要がある」と明記。「規則を守ることのみの指導になっていないか注意を払う必要がある」と記された生徒指導の資料を添付した。
 (嘉数陽)


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