【東京】沖縄の日本復帰50年についての決議が28日、衆議院本会議で賛成多数で可決された。衆院沖縄北方対策特別委員会での決議と同様、「日米地位協定」の「見直し・改正」に踏み込まなかったことから共産党などが反対した。岸田文雄首相は決議を踏まえ「決議の趣旨を踏まえ、政府として引き続き沖縄の発展のため、沖縄振興および基地負担の軽減に全力を尽くす」と述べた。
決議は、「強い沖縄経済と平和創造の拠点としての沖縄をつくる本土復帰五十周年に関する決議」。
5月15日に沖縄の日本復帰50年の節目を迎えるのに伴い、復帰直前の1971年、復帰25年の97年の決議も踏まえ、「強い沖縄経済」の実現に向けた沖縄振興の推進や「平和創造の拠点」としての位置づけ、「万国津梁」の理念に基づく人材育成を求めた。
一方で、「全国最下位の一人当たり県民所得」「子どもの貧困」を「沖縄の特殊事情に起因する課題」とした。
沖縄の過重な基地負担については、「日米地位協定」の見直しに踏み込まなかった一方で、「事件・事故の防止を含む米軍基地の負担軽減と諸課題の解決」を政府の「責務」とした。
岸田氏は、今後10年の沖縄振興計画の根拠法となる改正沖縄振興特別措置法が4月に施行されたことも踏まえ、「沖縄振興策を総合的、積極的に推進し、強い沖縄経済を実現していく」とした。
基地負担軽減の取り組みについては、「日米同盟の抑止力を維持しながら沖縄のみなさまの心に寄り添い、基地負担軽減の目に見える成果をひとつひとつ積み上げていく」と強調した。
(安里洋輔)
「強い沖縄経済と平和創造の拠点としての沖縄をつくる本土復帰五十周年に関する決議案」
本院は、本年五月十五日に迎える沖縄の本土復帰五十年の節目に当たり、苛烈な地上戦とその後の米軍統治、そして外交努力による本土復帰の歴史に思いをいたし、沖縄の持つ魅力と可能性が最大限発揮されるよう、沖縄振興を国家戦略として取り組む決意をここに表明する。
沖縄返還協定が調印されて以来、本院は、昭和四十六年の「非核兵器ならびに沖縄米軍基地縮小に関する決議」、平成九年の「沖縄における基地問題並びに地域振興に関する決議」を踏まえ、沖縄の課題解決に取り組んできた。しかし、五次、五十年にわたる沖縄振興計画等での取組みによっても、全国最下位の一人当たり県民所得や子どもの貧困等、依然として沖縄の特殊事情に起因する課題が存在している。政府は、こうした現実を踏まえ、引き続き、事件、事故の防止を含む米軍基地の負担軽減と諸課題の解決に向けた責務を果たす必要がある、さらに、復帰五十周年に当たって、沖縄県民の安心・安全及び強い沖縄経済の実現並びに世界の平和と安定のための創造拠点としての沖縄づくりに向け、最大限努力すべきである。
世界文化遺産と世界自然遺産を兼ね備えた沖縄の優位性と独自性を生かし、教育、芸術、学術、医療、経済、スポーツ、そして国際交流の分野で、アジア、世界との架け橋となる「万国津梁の魂」を体現する人材育成を行う意思を最大限尊重しつつ国民の共感と理解を得、世界を魅了する沖縄に向けた総合的かつ大胆で持続可能な振興策を、政府、国会、沖縄県が一体となって推進すべきである。
右決議する。
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