「沖縄復帰50年」ツイッターでつぶやき頻度の高かった言葉、浮かび上がる2人の名前【WEB限定】


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 沖縄が日本に「復帰」して50年を迎え、15日の記念式典の会場では「祝賀」を喜ぶ人がいる一方で、「素直に喜べない」と語る人も少なくなかった。リアルな式典の場とは別に、ネット上での言説ではどのような言葉がつづられていたのか。

復帰の日の15日とその前後1日の計3日間、短文投稿サイト「ツイッター」上に投稿されたつぶやきを分析してみると、復帰して50年がたつ沖縄を取り巻く環境を象徴するような言葉が並んでいた。その中でも特に、ある2人の人物の存在が浮かび上がってきた。

「復帰」をキーワードに5月14-16日のツイッターから抽出したつぶやきの単語。出現頻度と単語の重要度が高い順に文字の大きさで表している

 分析ツールはベンチャー企業のユーザーローカル(東京)の「ソーシャルインサイト」を用いた。ツイッター上でつぶやかれた言葉を、出現頻度と重要度を考慮して、文字の大きさで表現する「ワードクラウド」で表わした。

沖縄復帰50周年記念式典=15日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター

■「辺野古」や「基地」も関連ワードに

 ツイート上での出現が多いことを示す大きな文字で表現されたのは、「沖縄」や「復帰」「本土復帰」「50年」「記念式典」「5月15日」など、復帰そのものや50年の節目を示す言葉だった。

【写真ドキュメント】復帰50年を迎えた沖縄

復帰50年式典、沖縄と東京2会場で開催

 さらに「辺野古」や「米軍」「基地」といった言葉もよく出現していた。

 15日には沖縄県と政府の共催による沖縄復帰50年記念式典が沖縄と東京の両会場で開催された。この式典の開催について「祝う」や「おめでとう」といった歓迎する反応が起こる一方で、「厳しい」「祝えない」という言葉も出現し、「復帰50年」を複雑な感情で見ている様子がうかがえる。

 

 

高市早苗氏が復帰式典について投稿したツイッター

■「申し上げにくい」

 「沖縄」や「復帰」に次いで大きい文字で表示されているのは「申し上げにくい」。

この発言の元をたどっていくと、記念式典での天皇の言葉で着席させた会の進行に、苦言を呈するつぶやきを投稿した自民党の高市早苗政調会長のツイッターに行き着いた。

  •  〈「沖縄復帰50周年記念式典」は、政府と沖縄県の共催でしたから申し上げにくいのですが…。天皇皇后両陛下のお出まし時や天皇陛下の御言葉を拝聴する時に、司会者が会場の出席者に何故か「着席のままで」と要請したことです。リモートでの御臨席とは言え起立したかったので、残念でした。〉

  与党自民党の高市氏は、政府も主催者側に関わっていることを念頭に「申し上げにくい」と断った上で書き込みをした。この投稿に対して、18日時点で3.2万「いいね」がつき、5020件の拡散(リツイート、RT)、316件の引用ツイートと広く拡散している。返信欄をみると、高市氏の趣旨に賛同する書き込みがほとんどだった。 

高市早苗氏のツイッター

 高市氏は21年の総裁選に出馬し、SNSを活用して話題になった。その際にフォロワー数も急増し、現在41.4万人のフォロワーを擁するネット界で影響力のある〝インフルエンサー〟といえる。

 ワードクラウドに出てくる「takaichi」「sanae」の言葉も、高市氏のツイッターアカウント名と同じで、高市氏のツイッター関連で上位に上がってきたものだ。

 「天皇」の言葉は、高市氏の書き込みとそれへの反応として数多く出現してくるが、式典で天皇が言葉を述べたこと自体を取り上げるツイートも少なくない。その中には戦後、沖縄の軍事占領の継続を天皇が米国に希望した「天皇メッセージ」との関連を指摘する投稿もみられた。
 

 

 

復帰50周年記念式典会場の前で、ハンガーストライキを行う元山仁士郎さん=15日午後、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター前

■「ハンスト」

 高市氏のツイート関連の言葉と同じほどの文字の大きさで表示されているのが「ハンスト」。

「辺野古」県民投票の会元代表の元山仁士郎さんが、辺野古新基地建設の断念と普天間飛行場の運用停止などを政府に求めて5月9日から首相官邸前でハンガーストライキを始めた。元山さんは官邸前のほか、外務省や防衛省前でもハンストを続けてきた。15日の沖縄復帰50周年記念式典にあわせて沖縄に入り、式典会場の沖縄コンベンションセンター前でも座り込みを続けた。その様子は元山さん自身のツイッターアカウント(フォロワー数1.6万人)で逐一発信していた。

辺野古抗議の声「首相のノートに刻んで」 ハンストの元山さん

 

元山仁士郎さんのツイッター

 元山さんのツイートを拡散(RT)したり、引用して応援や批判したりするツイートが広がっていった。「要求が受け入れられるよう願う」と元山さんの訴えを支持するRTも多かったが、ハンストが「自己満足でおかしなことをしている」と批判的な視線を送る投稿もあった。そのような批判も踏まえて元山さん自身が「ハンガーストライキなんて無駄ではないのか?」という声に対して、自身の外国特派員協会での会見の動画を参照して「なぜこの復帰50年に際して、ハンストをやらざるを得ない状況があるのかを一番考えてほしい」と訴える投稿も多くRTされている。

復帰の日「祝うだけか」 元山さん全国に問う

 

 

 

 ツイッターの分析で抽出したつぶやきは約26万5千件。それらの投稿者の内訳をみると男性が68%、女性が32%と男性が多かった。発信された地域別で見ると、最も多かったのは関東地方で53.9%。次いで多いのが近畿地方で15.1%。沖縄を含む「九州・沖縄」は10.3%だった。

 

 

 


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