宜野湾市で開催された記念式典は沖縄戦から続く苦難を改めて振り返り、沖縄戦体験に根差す非暴力による平和の大切さを発信した。若者たちの合唱や伝統芸能の披露に沸き立つ場面もあった。一方、今なお変わらない基地問題の現状から「お祝いにしてほしくない、というのが県民の気持ち」と、祝賀モードとは対照的に割り切れない思いをにじませる参加者もいた。
式典開始前、複雑な表情を見せていた翁長孝枝さん(85)は「万歳する気になれない。復帰してうれしかったが、基地の問題は私たちに重くのしかかっている」と胸中を明かした。祝いではないと考えると、服装にも迷い、上着などには黒を選んだ。
一緒に来たおきなわ女性財団理事長の大城貴代子さん(82)も「祝いではない。(式典を機会に)県外の人に沖縄の不条理を知ってほしい」と思いを明かした。招待状が届いた友人は、祝うべきではないと考えて出席しなかったという。
式典はあいさつが淡々と進んだ。岸田文雄首相や衆参両院議長らが基地が集中する課題と負担軽減に触れたが、会場から特に反応はなかった。
終盤、全国知事会長の平井伸治・鳥取県知事があいさつの中で「てぃんさぐぬ花」を歌うと、拍手が起き、続いて那覇高合唱部が「芭蕉布」などを披露すると漂っていた緊張感が一気に和らいだ。(中村万里子まとめ)
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