9月11日投開票の知事選に、現職の玉城デニー氏(62)が2期目を目指して出馬することを正式に表明した。2018年の前回選と同じ顔ぶれを中心に選挙戦が展開される構図がほぼ固まった。前回勝利を収めた玉城氏優位との評もあるが、新型コロナウイルス禍などの社会情勢や、支持基盤「オール沖縄」の退潮など、前回選挙からの変化もある。玉城陣営は政策の練り上げや選挙態勢の構築を急ぎつつ、間近に控える参院選での支援候補勝利に向けた動きを本格化させる。
■選挙対策
「力強い出馬表明だった。良いスタートダッシュが切れた」。11日の出馬表明会見後、オール沖縄幹部は顔をほころばせた。玉城氏サイドは、再選に向けて、改めて露出を増やしている。
会見を控えた7、8日には、新型コロナの影響で19年以降は実施できなかった「行政視察」を再開させ、1泊2日で粟国村を訪問。4日には知事が各分野の現場の声を聞く「対話キャラバン」も開始し、子ども支援団体の要望を聞いた。
与党関係者は「コロナで今まで動けなかった分、公務でも政務でも多く顔を見せることが必要だ」と事実上の「選挙対策」だと認める。野党の自民党県連幹部は「現職の強みを生かした動きだ」と警戒感を強める。
■揺らぐ足元
県政奪還を狙う自民県連などは、前回知事選に出馬した前宜野湾市長の佐喜真淳氏(57)を再び擁立した。2018年の前回選挙で、玉城氏は佐喜真氏に約8万票の差を付けて当選した。
ただ、前回選挙は翁長雄志前知事の急逝による「弔い合戦」の側面があり、票差ほどの差はないという指摘もある。新型コロナ禍やウクライナ情勢など、社会情勢は大きく変わり、県民が求める政策の優先順位に変化が生じる可能性も大きい。
4年の間に一部保守層・経済界が離脱するなど、オール沖縄の構成も変わっている。玉城氏は「必ずしもそれで(オール沖縄が)弱体化しているとは受け止めていない」と述べたが、額面通りに言葉を受け取る向きは少ない。
今年実施された市長選では、南城市の現職が破れるなどして自公勢に4連敗を喫した。オール沖縄勢の首長の筆頭格で、任期限りでの引退を表明している城間幹子那覇市長が、後継にオール沖縄の旗印と言える「辺野古反対」を求めない意向を示すなど、理念の継続すら危ぶまれている。
支持基盤の足元が揺らぐ中、玉城陣営が再選に不可欠と位置付けるのが、知事選と同様に全県選挙となる参院選だ。辺野古反対を掲げる現職の伊波洋一氏(70)の勝利を、知事選への弾みにしたい考えだ。
「市長選であれば争点は辺野古だけではないと言い切れるが、国政選挙である参院選はそうはいかない。ここでこけたら打撃は大きい」(与党県議)との危機感もある。玉城氏も議会日程などをにらみながら、支援を本格化させる構えだ。
(大嶺雅俊、池田哲平)
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