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「ウチナー・ジャズ・ゴーズ・オン」沖縄のミュージシャンたちが込めた「音」と思い リーダー真栄里英樹に聞く【WEB限定】

CDの発売とコンサートのPRをする真栄里英樹=2日、那覇市の琉球新報社(喜瀬守昭撮影)

 沖縄の著名なジャズ奏者が一堂に参加するアルバム「ウチナー・ジャズ・ゴーズ・オン」(リスペクトレコード)が6月22日、発売された。発売を記念したスペシャル・コンサートが7月30日午後7時から、沖縄市のミュージックタウン音市場で開催される。アルバムのプロデューサーを務め、自身もトロンボーン奏者であり、ビッグ・バンドのリーダー真栄里英樹にアルバムへの思いなどを聞いた。 (聞き手 田中芳)

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ーアルバム制作のきっかけを聞かせてほしい

「前作の『ウチナージャズ!』を出させてもらってから14年がたち、『そろそろウチナージャズどうね?』というお話をいただいた。あえて復帰50年にちなんでいたかは分からないが逆に良い節目だった。このご時世、きっかけがないとレコーディングはできない。ジャズのビックバンドを含めた制作というのはものすごく大変なことなので。制作させていただけて良かった。復帰の50年が重なってきたんだと感じた。一緒にアルバムをつくらせてくださいということで入らせてもらった」

 

 ーアルバムの参加者は真栄里自身が声を掛けて実現した

「僕の中でのコンセプトはビックバンドがあって、ビックバンドの中に安富祖貴子さんのボーカルが入って、上原昌栄さんのドラムが入ることだった。アルバムの伏線にテリー重田さんのカルテット、アラン・カヒーペさんの大御所カルテット、屋良朝秋さんのカルテットがあり、これが一枚に入ったらとんでもないものになるぞと。復帰50年を境目に、今残したいウチナージャズ。その後、語り継がれていくようなアルバムにしたいな、という気持ちで声を掛けさせていただいた」 

 


沖縄で沖縄のジャズをしていくということ

 

ー前作から14年。沖縄ジャズの変化をどのように感じているか

「一番大事なと言っても過言ではないジャズピアニストの屋良文雄さんや、そのほかの偉大なミュージシャンも亡くなられた。沖縄で沖縄のジャズをしていくということに関して、良い言葉かは分からないが衰退はしていないと感じる。いろんな音楽と交わる機会が増え、音楽的に広がっている。今回のアルバムはサウンド的にトラディショナルな、伝統的なものを追求している。県芸を卒業した若手の三線奏者とジャズ奏者がエレクトニックな音を使った音楽だったり、いろんな分野でとても広がっていると思う」

 

ー表題曲「ウチナー・ジャズ・ゴーズ・オン」の作曲を手掛けた

「あまり難しく考えないで自分の中で出てきたメロディーをそのまま、落とし込んでみようというのがあった。なので、メロディーがいそがしくないと思う。ちょっと琉球音階が入っていたりとか。意図的というよりかは自分が思い浮かんだもの、難しくせずにストレートに楽譜に落とし込んだ。今の、朗らかに前に進んでいくというイメージを伝えられるのかなというような気持ちで書いた」


録音に熱が入る真栄里英樹BIGBANDのメンバーら=15日、那覇市文化芸術劇場なはーと小劇場(喜瀨守昭撮影)

 

 ーCDは那覇文化芸術劇場なはーとで4日間かけて収録した

「録音の仕方は最近では珍しいやり方だ。今は録音技術もすごく発達しているので、スタジオでそれぞれの楽器のパートごとに部屋を分けて採るが、今回のアルバムはステージに乗っかって、簡単にいうと、ライブをしている感覚で収録した。ここだけ取り直そうというのがまずできない。一発取りでテイクを何回かとった。これがやっぱり、すごく良かったと思っている。どうしてもコロナで人と一緒に演奏する機会が少なくなりできなくなる中で、やっぱり同じ息づかいを感じながら、側にいながら音を出していくというのは言葉にできないものがある。やっている僕らからしても素晴らしい経験をさせてもらえたなと思っている。その空気を自宅で聞いてもらえたらと思う」

 

ー「月桃」は編曲を担当している

「月桃は歌詞が6番まであり、貴子さんの包容力のある歌声で歌詞をしっかり伝えてもらいたいという思いがあった。ジャズのスタンダード曲は、だいたい(歌詞が)1番しかない。何回も繰り返して歌う。日本の曲をアレンジしているジャズの曲も他にいっぱいあるが、割と歌詞をはしょっている。月桃は6番までの歌詞に意味がある。(ジャズで)1番から6番まで歌ってもらっているのは異例だと思う。自分の中に、歌詞を入れて歌っていただけたのは素晴らしかった。月桃に関しては貴子さんの曲になった」  

 


いま、ここでしか奏でられない音楽に

 

ービックバンドを立ち上げたきっかけは

「学校で音楽を学んでも、音楽でご飯を食べていくのは難しい。卒業後、クラシックの音楽家の道とはまた別に、ジャズやポップスで認知してもらいたいと思っていた。生活に受け入れられる、これからの若い子たちの受け皿になるものを僕らがつくらなきゃいけないという責任感があった。ビックバンドは受け皿になるには一番最適であろうと考えた。編成は17人。世界標準でもあり、ジャズでいう最大のオーケストラだ。多様性に富んでいて、お客さんにジャズの楽しさを一番伝えやすい形態だ」  

 

ービックバンドでのCDは初めて。振り返って思いを聞かせてほしい。

「これが一つのきっかけになって、もっと先に進めればと思う。県内の素晴らしいジャズミュ―ジシャンを一堂に集めて、制作させてもらった。次の次につながっていけると良いかな。ジャズの音楽自体、アドリブが入ってくるので同じものは絶対にできない。その時にしか出てこないフレーズがある。何よりも全体的なサウンドは、その時に置かれた状況がすごく反映されている。こんな時代だからこそ、とれたんじゃないか。なので、コロナじゃなかったらとか、コロナが終わったらと、いうのがあるかもしれないが、今だからこそ、人との温かみとか、一緒にやっていくことの素晴らしさをかみしめながらレコーディングさせてもらった」 

 

 ー30日のスペシャルライブに向けて抱負を。

「アルバムに参加した皆さん全員が出演する。こういう機会は二度と来ないと思う。収録曲にプラスアルファを考えながらプログラムを組んでいく。ぜひ足を運んでもらえたら。ライブ配信もある。できれば会場で生で聴きに来てほしい」

 

 


「ウチナー・ジャズ・ゴーズ・オン」のジャケット写真

 

「ウチナー・ジャズ・ゴーズ・オン」

CDは全15曲を収録。税込み3300円。全28ページの解説、歌詞付きのブックレット付き。

スペシャル・コンサートが7月30日午後7時から、沖縄市のミュージックタウン音市場で行われる。

入場チケットは全席自由一般前売り3500円、高校生以下前売り1500円(当日各500円増し、別途ドリンク代)。

ライブ配信チケットは2000円。

問い合わせはミュージックタウン音市場(電話)098(932)1949。

 

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