ペロシ米下院議長の台湾訪問計画を巡り、米中の偶発的な衝突へのリスクが指摘される中、米軍基地が集中する沖縄県内でも懸念が高まっている。上京中の玉城デニー知事は2日午後、記者団に対して「冷静に対処してほしい」との考えを強調した。一方、米空軍嘉手納基地では空母艦載機や米本国所属の空中給油機の飛来が確認されるなど、緊張感が一気に増した。
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ペロシ氏の訪台計画を巡り、県などは2日、情報収集に追われた。県関係者によると、政府側から対応策などについて連絡はないという。概算要求に向けた要望のために上京していた玉城氏は2日、東京都内で会見し、ペロシ米下院議長の台湾訪問による沖縄への影響について問われ「地域の緊張感が高まって不測の事態が生じるようなことは絶対にあってはならない」と懸念を示した。
松野博一官房長官は2日の記者会見で「コメントする立場にない」と述べるにとどめた。県内の自衛隊基地や海上保安庁は表だった動きは見られなかったが、関係者は「状況に応じて、急派など対応する」とし、ペロシ氏の動きや中国側の出方を慎重に見極める姿勢だ。
7月28日の米中電話会談で、バイデン氏が「一つの中国」原則に留意する米国の政策に変わりはないと強調した。防衛省関係者は、この電話会談でのやりとりがペロシ氏の訪台によって中国が受ける刺激を抑えたと分析する。「大原則は変えないと明確にしているため、中国にとしては軍事力を行使する理由にならない」と述べた。その上で「中国の習近平国家主席は、自身が3期目を目指す共産党大会前に、軍事力で対抗するよりも、国内の結束に利用し、弾みとして利用する方が合理的だ」と語った。
一方、米空軍嘉手納基地には7月30日以降、米国内の空軍基地所属のKC135空中給油機11機の着陸が確認されたほか、米原子力空母ロナルド・レーガン艦載輸送機のC2Aグレイハウンド2機が相次いで飛来しており、米軍が南シナ海や東シナ海に空母を展開し警戒させた可能性もある。
ペロシ氏の訪台と因果関係は不明だが、2日の日没後は、空中給油機や早期警戒機、F15戦闘機数機が離陸する様子が確認され、関連する動きの警戒に当たったとみられる。
こうした状況に、嘉手納基地を抱える北谷町の渡久地政志町長は「沖縄は台湾や中国にも近く、緊張が高まれば、生活被害や町民の不安にも直結する。国の出方について口を出す立場にないが、選択しうる外交手段を用いて、平和的に収めることを期待している」と語った。
(安里洋輔、明真南斗、名嘉一心、池田哲平)
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