飛ばないクイナ「賢い」 帝京科学大チーム 石で貝割る行動も 二足歩行で脳大きく


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くちばしにくわえた貝を石にたたきつけて殻を割るヤンバルクイナ(中尾達郎さん撮影)

 飛べない鳥は脳が大きく賢い―。帝京科学大、山階鳥類研究所、東京大の研究チームがクイナ類の脳の大きさを3次元で推定した結果、ヤンバルクイナを含む飛べない種は飛べる種と比べて脳が大きく、認知能力が高い可能性があることを明らかにした。英国の科学誌「ジャーナル・オブ・アナトミー」に5月24日付で発表した。

 鳥類学研究においては長年、飛翔(ひしょう)能力と脳の大きさ、形、頭を支える首の構造などの関係が論争の的となっていた。

 研究チームは飛べる種と飛べない種がいるクイナ類に注目。日米の研究機関に保管されている23種の頭骨標本をX線CTで撮影して脳の大きさを3次元で推定し、系統が近い種の飛翔能力の有無と脳の大きさを比べた。

 結果、飛べない種の脳は飛べる種より体重の割に大きいことが明らかになった。さらに、ヒトと同じように、大きい脳を首が真下から支える構造的な傾向が強く見られることも分かった。

 研究チームの帝京科学大の島田将喜准教授(人類学)らは、ヤンバルクイナがヤンバルマイマイといった陸貝類を捕食する際、くちばしにくわえた貝を石にたたきつけて殻を割ることを確認している。

 島田准教授は「クイナ類は約150種が知られているが、このような捕食行動が確認されているのはヤンバルクイナだけだ。高い認知能力があって初めて可能になる」と指摘。「飛ばずに常時二足歩行をすることが脳を大きくした可能性を示唆している」と研究結果の意義を強調した。

 一方、今回調べた23種のクイナ類のうち、脳が大きく飛べない種の全てが島しょ地域に生息していることから「脳の大型化の要因が常時二足歩行なのか、島での生息という環境的なものなのかは今後の研究が待たれる」とも指摘。脳の大型化が先か常時二足歩行が先かの進化の順序についても追加調査が必要とした。

 島田准教授は「ヤンバルクイナの賢さは飛べないことと密接に関連している可能性が大きい」と指摘。「ヤンバルクイナが生息するやんばるの生物多様性は宝だ。この研究結果がやんばるの自然を守っていくきっかけの一つになればうれしい」と語った。
 (安里周悟)


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