修学旅行シーズンの10月を前に、バス車両や運転手、バスガイドの不足が顕在化している。需要に対応できない状況になりかねず、県内のバス会社は窮状を訴えている。琉球バス交通の大城逸雄常務は「このままでは千台分足りない」と危機感を示す。
新型コロナウイルスの影響を受けて廃業したバス会社や、保険料や車検などの維持費がかさむため減車した事業者も多く、県内の貸し切りバスは約3年の間に200台以上減少したという。沖縄総合事務局によると、沖縄本島の貸し切りバス事業者は、新型コロナ拡大前の2019年3月時点で43社だったのに対し、今年3月時点では36社に減少した。
コロナ禍による需要激減を受けた離職や高齢化で運転手も足りなくなっている。大城常務によると、現在、修学旅行に対応する貸し切りバスは県内に450台程度あるものの、運転手不足により7割程度しか稼働できていないという。
中部観光バスでは、コロナ禍を受けて50台あった車両を約10台減らした。担当者は「依頼はたくさん来ているが、車両がある分しか受け入れられない」と話した。
バスガイドの離職や高齢化も深刻だ。ガイド抜きで案内をすることもできるが、サービスの質が低下すれば、沖縄での満足度が下がってしまうのではないかという懸念もある。
新型コロナの影響を受けた20年、21年も同様に車両、人材ともに不足して需要に対応できない恐れがあったが、感染拡大によって直前でキャンセルが多発したため表面化しなかった。
しかし、近頃は感染拡大のペースが落ち着いており、ウィズコロナの認識の広まりで観光客数も回復傾向にあることから、対応できない事態となるのではと危惧する声が高まっている。
琉球バス交通では、修学旅行シーズンの人手不足を補うために、秋頃が閑散期である北海道から応援の人員を手配していた。19年度は運転手22人、バスガイド33人を受け入れた。宿泊費や交通費、土地に慣れるための研修費などは全て自社負担で、2カ月間で約3千万円ほどの費用がかかっていたという。同社は県に対して補助を求めているが、県の担当者は「現段階では難しい」と難色を示す。
大城常務は「今年受け入れに失敗してしまっては、来年以降は修学旅行は来なくなってしまうだろう」と不安を語った。「この時期だけでもなんとかして人員を確保したい。インフラが壊れた状況を打開するために、行政と観光事業者で連携して受け入れを強化していきたい」と話した。
(與那覇智早)
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