【宜野湾】沖縄県宜野湾市野嵩の緑ヶ丘保育園に米軍機の部品が落下した事故から7日で5年がたった。米軍は普天間飛行場所属の大型輸送ヘリCH53の部品であることを認めた一方で落下との関連は否定し、真相があいまいなまま、県警も2020年に調査を終了した。神谷武宏園長(60)や保護者らが訴え続ける園上空の米軍機の飛行禁止は果たされていない。事故後に設置された防犯カメラは今も「危険な空」を向く。
「静かな空を」。そんな願いを込め、神谷園長が訪米予定の宜野湾市長に園児や保護者らのメッセージを手渡したのは2008年。その9年後の17年、願いを打ち砕くように事故が起きた。
事故後、保護者らと共に国や県などに対し、園上空の飛行禁止を求め直接要請を行った。その間も「自作自演」「自首しろ」と連日のように誹謗(ひぼう)中傷メールが届いた。
事故を経験した子どもたちが昨年3月に全員卒園し、当時を知らない保護者も増えた。米軍機の騒音が鳴り響き、園上空を飛ぶ日常は変わらない。市内では、21年11月に米軍機からの水筒落下事故も起きた。
「ヘリから何も落ちてきませんように」。子どもたちの口から自然と出てくる言葉が神谷園長の胸をつく。「そういうことを願う状況はつらい。子どもなりに向き合っているのだろう。現状を見る強さへつながれば」と捉える。
同事故は県警が20年に「上空からの落下物とは特定できなかったが、その可能性を否定するものでもなかった」と発表し、調査は事実上、終結した。一方、神谷園長は昨年も事故当時の状況や現状を保護者らとともにオンラインで発信した。「命の問題だから。訴えを止めるわけにはいかない」。その一方で「当事者が語り続け、訴える状況はいつまで続くのか」とのやるせなさも抱える。「空はつながっている。“自分事”として捉え、全国の問題として全国の方にも引き継いでほしい」。広がりを強く望む。
(新垣若菜)
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