定年退職者の教員再任用、10年で7倍に増加 沖縄の公立学校、なり手不足が要因か


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 沖縄県内公立学校の教職員に定年退職者の再任用が増えている。2012年度は49人だったが、22年は339人で、10年間で約7倍に増加。文部科学省と県教育委員会は増加の背景を「分析していない」とした上で「再任用制度の周知が進んだこと」などを要因の一つに挙げる。関係者からは、臨時的任用教諭(臨任)が確保できず、再任用者に頼る傾向が強まっていると指摘する声がある。

 文科省の人事行政状況調査によると、県内の22年4月1日時点の再任用者数は339人で、フルタイム勤務は242人、短時間勤務は97人。職種別では教諭が最多で290人(フルタイム194人、短時間96人)、事務職が15人など。校種別では小学校が166人、中学校81人、高校70人、特支校22人だった。

 再任用者が学級運営に当たる場合もあるという。現場からは「年齢的につらい」といった声もある。退職者で賄っても教員不足の抜本的な解決には結び付かないとの指摘もある。

 中学で学級担任を務める再任用者の一人は「人手が足りないとお願いされて引き受けた。教育現場のためになればという一心だが、体力がもたない」と吐露した。別の中学で担任をしている再任用者は「校務もあって、仕事量は現役とあまり変わらない。体力的に長く続けられない」と話した。

 県教職員組合(沖教組)の上原邦夫中央執行委員長は「増加の背景には教員不足、なり手不足があると考えている。積極的な方もいるが、仕方なく引き受けている人が多い印象だ。臨任依存から再任用依存に変わり始めていないか。不足問題の解決にはつながらない」と懸念を示した。
 (嘉数陽)


<用語>教職員再任用制度

 公的年金の受給年齢が60歳から65歳に引き上げられたことに伴い、地方公務員法を改正して2001年4月に導入された。再任用に当たっては教員採用試験のような筆記試験はなく、定年退職前の勤務実績などを記した書類選考と、必要に応じて面接がある。

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