精神疾患による休職者数が深刻な沖縄の教育現場を考察するシンポジウム「学校にもウェルビーイングな風を~教職の魅力向上のために~」(主催・教職員のメンタルヘルスプロジェクト、共育の杜)が5日、那覇市の八汐荘で開かれた。有識者が会場とオンライン上で集まった教職員の質問を受けながら、沖縄の教育現場に山積する課題について議論した。教職員からはつらくても仕事を続ける教員が多い実態や、国や県、市町村による業務軽減を求める声が上がった。
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主催者を代表してあいさつした共育の杜理事長の藤川伸治さんは、精神疾患による教員の病休者の多さが「社会問題だ」と指摘する。「沖縄は社会、経済的に格差が著しく大きい。それらの背景を抱えた子どもたちが学校に来た時に、教職員が愛情をもって包み込むことが子どもの幸せにつながる」と強調した。
基調講演した東京大学名誉教授の小川正人さんは、働き方改革の課題についてさまざまな調査結果を示しながら説明した。長期の病休と強い相関があるとされる、1カ月以上の病気休暇者数の把握の重要性や、安心できる勤務環境の整備を目標とした労働安全衛生管理体制の課題も紹介した。
会場の中学校教員からは「個人の意識を変えてどうにかするというのは限界がきている。忙しすぎて思考が停止している面もある」として、教育行政による具体的な軽減を強く求める声があった。
司会進行を務めたお笑い芸人のせやろがいおじさんは「なかなか個人では手の届かない、構造の問題がある。どうアプローチしていくか、これを機に大きなうねりができればいい」と締めくくった。
(嘉数陽)
多くの視点で問題指摘
シンポジウムのパネルディスカッションには、知念高校養護教諭の上原厚子さん、西本裕輝琉球大教授、ヤフー株式会社グッドコンディション推進室室長の市川久浩さん、産業医の三宅琢さんが登壇した。
市川さんは企業の立場から「心身のコンディションを最高にすることで、いいパフォーマンスが発揮できる」と話し、ヤフーで実践するメンタルヘルス対策を紹介した。
三宅さんは医師として「(教員は)健康の優先順位が低い」と指摘し、「自分はどこまで頑張れるのかを把握することが大事。産業医にどこで会えるのか、病休後はどう復帰できるのかなど情報を可視化して、働き続けられるための整備が求められる」と行政に求めた。
西本さんは研究者の視点から「新しい仕事が生まれたら古い仕事をやめるという、引き算の発想がとても大事だ」と述べ、業務改善が進まないことについて文科省の責任も指摘した。
学校の現場から上原さんは「自分の健康を守ることで、目の前の子どもに還元できる。シンポジウムが一つの大きな波になればいい」と期待した。
(嘉数陽)
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