「現場の声が軽んじられている」沖縄県立八重山病院の院長が辞職へ 他の幹部も辞表、県病院事業局との間にできた溝の理由


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県立八重山病院(資料写真)

沖縄県立八重山病院の篠崎裕子院長が、県の医療行政に対する不満を理由に本年度末で辞職することが1日までに分かった。離島医療を支える人員補充の要望や、恒久ヘリポート設置を巡る協議に現場の意見が反映されてないなど「医療現場の声が軽んじられ、病院事業局と溝ができている」ことが主な理由。同院では昨年末に松茂良力副院長が辞職しており、他の幹部1人も辞表を提出している。管理職の相次ぐ辞職に病院事業局は「八重山の医療に支障がないようにする」と後任人事を急いでいる。

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現在、八重山医療圏では人材不足により人工透析医療がひっ迫している。八重山病院では昨年7月に病院事業局に看護師などの増員を求めてきたが、2023年度の増員は1人だけ。一方で本庁の病院事務総務には5人が増員された。篠崎院長は「八重山だけでなく、各病院が増員を求めたが反映されていない。医療行政の優先順位が理解できない」と語る。

石垣市内の恒久ヘリポート設置に向けた協議も要因の一つ。候補地について搬送時間や安全性、災害時対応の観点から、病院隣接地を要望してきたが「主張がないがしろにされている」という。遠因には2021年に県立中部病院で新型コロナのクラスターが起きた際、病院事業局が公表を遅らせた対応もある。

篠崎院長は3月末で就任から5年となる。昨年11月に退職願を提出。同12月に我那覇仁局長と面談したが、慰留はなかったという。引き継ぎなども考え、3月末での退職となった。篠崎院長は「病院事業局は医療現場に足を運び、意思疎通ができる体制にしてほしい」と変革を求めた。

(嘉陽拓也)

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