岸田文雄首相の秘書官だった荒井勝喜氏が性的少数者や同性婚を巡り「見るのも嫌」と差別発言をしたことについて、県内の当事者や支援者からも怒りの声が上がっている。性の多様性に社会の理解が広がる中、岸田首相自身も同性婚制度に否定的な発言をしていることから、社会の流れと政権全体の認識のずれを指摘する声も出ている。
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NPO法人レインボーハートプロジェクトokinawaの竹内清文理事長は、多様性を認め合える社会を目指し、県内の学校で講話を続けている。ゲイであることを公表し、周囲の応援に支えられているが、荒井氏の発言に「生きているだけで疎まれるんだと思うと、ぐさっと来る。全然平気じゃない」とショックを受けている。
2020年施行の改正労働施策総合推進法は、性的指向や性自認に関する侮辱的な言動もパワハラの一種として盛り込んだ。竹内さんは「どんな場面でも駄目だが、企業内だと違法な発言だ。法律はこんな発言を許していない」と、荒井氏発言の異常さを強調する。
ピンクドット沖縄の高倉直久代表理事は、岸田首相が多様性を政策に掲げるが、周囲に浸透させきれていないと指摘し「意識が低過ぎる。ちゃんと理解していればあのような発言にはならない。政策は口先だけのパフォーマンスと思われても仕方ない」と話した。
同性婚制度などの問題について「あまり勉強されておらず関心がないのでは。苦しんでいる人はたくさんいる。そういう人に手を差し伸べるのが誰一人取り残さない社会ではないのか」と疑問を呈した。
現在、先進7カ国(G7)で同性カップルの制度がないのは日本だけだ。国内の世論調査でも同性婚容認が多数を占めるようになり、社会は性の多様性を尊重する社会へと変わりつつある。しかし、岸田首相は法制化に「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と否定的な考えだ。「変化」に対する捉え方は対照的に映る。
ジェンダー法に詳しい琉球大法科大学院の矢野恵美教授は、荒井氏だけでなく、政権全体に根深い差別意識があるのではないかと疑いの目を向け「首相は、G7で日本だけ(同性カップルの)制度がないことをどう考えているのか。制度化することで社会が悪い方向に変わると考えているのなら、その根拠を示すべきだ」と指摘した。
(稲福政俊、中村優希)
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