「時間外勤務は改善傾向にあり、働き方改革の成果が着実に出つつある」。永岡桂子文部科学相が6日の衆議院予算委員会で、教員の勤務実態について述べた。沖縄県教育委員会は4日に初開催したペーパーティーチャーセミナーで、月80時間以上の長時間勤務者数の調査結果を示し、小中学校・県立学校いずれも改善していると説明。現場教員からは業務の持ち帰りの実態や負担増を訴える声が大きくなっているが、現場教員と国・県側の主張は食い違っている。働き方改革には公金の投入も必要になるが、根拠となるはずの調査結果は必ずしも現場の実態を反映しておらず、現実味のある改革になるのか懸念が残る。
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永岡文科相は6日の衆議院予算委で、教員不足について「各教育委員会から聞き取ったところ、年度後半の方が深刻化する傾向がある」と述べた。県教委は教員不足の現状について、2022年10月時点の計96人という結果以降更新した調査結果を公表しておらず、実態は不明。更新値を公表しない理由について県教委は、琉球新報の取材に「調査中」とだけ回答した。 不足数に関しては別の問題も指摘されている。たとえ数値が公表されたとしても、不足数には学校が独自に工夫を凝らし、教科専科の教員や学習支援員を担任に充てるなど、何らかの方法で配置した場合は欠員数に含まれない。“誰にとっての不足数”なのか、調査方法を疑問視する声も多い。
県教委は4日のセミナーで、月80時間以上の時間外勤務者数について、2019~21年度の平均値を紹介した。小中学校は19年度5・5%、20年度4・0%、21年度2・9%。県立学校は19年度3・9%、20年度2・7%、21年度2・0%と説明。改善傾向にあると説明した。業務を持ち帰っているケースなどについては紹介されなかった。
琉球新報が1月に募った教員の働き方に関するウェブアンケートでは「持ち帰りの仕事や休日出勤もしないと追いつかない。県教委と現場の意識のズレが大きい」(57歳、小学校学級担任)、「見かけの残業時間は減っている可能性もあるが、持ち帰り残業など見えない残業が増えている」(37歳、高校学級担任)、「子どもがいる私は(業務を)持ち帰り、そうでない職員は遅くまで残っている。朝5時前に来て仕事をする職員もいる」(38歳、中学学級担任)などの声が寄せられている。
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