低用量ピル処方、沖縄は全国で最も少なく 治療目的、受診控えで普及進まず


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
月経困難症の治療などに用いられる低用量ピル

 女性の社会進出が進む中、生理など特有の悩みを抱えて働く人は多い。避妊目的で開発されたピルは、生理痛の緩和や月経前症候群(PMS)にも効果があり、生活の質を高め、ジェンダー平等にもつながると注目されている。医師は「我慢を強いることは時代遅れ」と話し、悩む女性に婦人科への相談を勧める。ただ、沖縄は生理痛緩和などの治療目的で低用量ピルを服用する人が全国で最も少なく、普及が進んでいない状況だ。

 那覇市の30代女性はPMSを相談できず、症状のひどさから仕事を休まざるを得ないこともあった。低用量ピルの服用を始めて症状が改善し、前向きに仕事に取り組めるようになった。

 那覇市のJoyレディースクリニックくもじの大島教子院長によると、来院する女性の約半数が生理に関わる相談で、低用量ピルの服用に関するものも増えている。同院で処方した10~40代前半の幅広い年代で、生理痛の緩和などに手応えを感じている。「女性の社会進出が進む中、生理痛を我慢しながら働かなくてもいい。選択肢の一つとしてあっていい」と話す。同時に食事や運動習慣など生活の見直しも促す。

 日本の場合、第1子の出産は平均で29歳。現代女性は生涯の生理回数が格段に増え、子宮内膜症など月経関連疾患も増加している。このため、今は妊娠を望まない時期の生理は「不要」と考えられており、低用量ピルの服用は疾患の予防にもつながるとされる。

 日本家族計画協会の2019年の調べによると、月経困難症などの治療目的での低用量ピル処方は、沖縄県は千人当たり96.1人と全国で最も少ない。全国平均は207.4人。経済的事情による受診控えなどが理由とみられ、若年妊娠の多さの一因とも考えられる。

 低用量ピルには女性ホルモンが含まれ、排卵を抑制し避妊効果があるほか、生理痛の緩和や貧血の改善、子宮内膜症の予防や治療、PMS緩和などに効果がある。飲み始めに吐き気や頭痛などの副作用が出ることがある。日本産婦人科学会は、肥満者や喫煙者、乳がんの既往歴がある人などに慎重投与を定める。

(中村万里子)

【関連記事】

▼「頭では分かっていたが…つらい」男性が妊娠・生理体験

▼生理の貧困 社会の「タブー視」が隠すSOS

▼生理中のプール授業 医学、人権上問題は?

▼月経困難症、ピル服用の検討を<ドクターのゆんたくひんたく>

▼1日の家事の時間 女性3時間28分、男性は53分で4分の1 沖縄