原動力は「宇宙を理解したいという好奇心」中国で宇宙論を研究する島袋さん、天文学を目指したきっかけは


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
天文学を志すきっかけとなった相対性理論の方程式を板書する島袋隼士さん=2月、那覇市の琉球新報社

 【那覇】那覇市出身の天文学者、島袋隼士(はやと)さん(35)は中国・雲南大学の准教授として宇宙論を研究している。ヨーロッパや中国などが連携して南アフリカとオーストラリアに電波望遠鏡を建設するSKA計画にも関わる。インターネットで一般向け講座も開催し、天文学の普及に努めている。

▼IQ153、スーパー7歳 メンサ合格、夢は科学者

 宇宙に興味を抱いたのは城北中学校に通っていた14歳の頃、学校の図書館で相対性理論の本を手に取ったのがきっかけ。時間と空間を取り扱う相対性理論は宇宙を理解する上で重要だという。東北大で天文学を学び、名古屋大大学院で博士号を取得した。フランスのパリ天文台などで任期付き研究員をした後、2019年12月に雲南大の副研究員となり、22年12月に准教授に昇進した。

 島袋さんは、宇宙で最初の星や最初の銀河が誕生した時代について、主に理論面から研究しているが「理論だけでなく観測や実験で検証していくことが大事」と語る。自身が関わるSKA計画の望遠鏡では、宇宙に存在する水素が出す電波を観測することで、最初の星が誕生した時代の様子も知ることができるという。

 競争の激しい研究の世界ではうまく結果が出ず、心が折れそうになることもある。壁を乗り越えるために「まず自分でとことん考え、人と議論する。能力を集中力と時間でカバーする」ことを心掛けている。原動力は「宇宙について理解したいという好奇心」だ。「知識を吸収して新たな知識を切り開いていく仕事はやりがいがある」と話す。今後のテーマとして、宇宙観測に適した月の裏側に望遠鏡を建設する計画や、地球外生命の探査にも関心があるという。

 中国の「ゼロコロナ」政策で出国が難しかったが、今年1~2月には3年ぶりに沖縄へ帰郷した。琉球大の学生たちに自身の研究などについて講演した。「沖縄の学生や一般の人たちにもっと天文学を普及していきたい。天文学者を志す若者に、こういう道があると知ってもらえたらいい」と話した。

 島袋さんのネットでの講座は「オンライン天文学講座」で検索できる。
 (伊佐尚記)


【関連リンク】

▼沖縄初の東大野球部員、島袋祐奨さんに聞く「文武両道」のコツ

▼「被害者の助けに…」沖縄出身の検事が地元に戻って強くした思い 関口奈々さん(福岡高検那覇支部・検事)

▼沖縄出身のキャリア官僚、激動の日々と古里への思い 内閣府参事官・富永健嗣さん

▼ハーバード大大学院進学の伊礼雛子さん「ウチナーンチュのアイデンティティーが私を突き動かす」平和構築や教育学ぶ

▼「南極の氷で泡盛を飲みたい」 琉大職員の金城さん念願の観測隊員に選出