沖縄科学技術大学院大学(OIST)の石川裕規博士の免疫シグナルユニットはこのほど、那覇市医師会と協力した臨床研究で、ヒトの粘液や海藻類のぬめり成分に含まれる「フコース」を分解する腸内細菌が新型コロナワクチンの効き目に影響を与えることを突き止めた。フコースを分解する菌の量が多い人ほど、ワクチンの効き目が悪くなる可能性がある。この菌は、日本酒や泡盛などで増えると言われており、ワクチン効果を高めるため、接種前には飲酒を控えるなど食生活の改善にも参考になりそうだ。
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18日、県庁記者クラブで記者会見を開いて発表した。協力の呼びかけに応じた県民96人を対象にファイザー製ワクチンの1回目の接種前と接種2日後、2回目の接種2日後、7日後、41日後の血液と便を調べた。
その結果、フコースを分解する菌の量が多い人ほど、ワクチン接種後に「T細胞」の反応が低くなることを突き止めた。T細胞は、新型コロナに感染した細胞を除去する働きを持ち、ワクチンによって増加する。
ワクチン反応が良かった上位20人と下位20人の遺伝子を調べたところ、T細胞の活性化や生存に影響する遺伝子の活性にも違いがあることが分かった。フコースを分解する菌の量が多い人ほど、この遺伝子の活性が高かった。また遺伝子の活性が高い人ほど、ワクチン接種後のT細胞の反応が低かった。
記者会見で免疫シグナルユニット博士課程4年の廣田雅人さんは「ワクチン接種前に血液や便を採取し、反応が低いと予想される人には接種回数や量を増やすなど、個々人の状態に応じた投与方法の開発や、腸内細菌をコントロールすることでワクチン効果の改善につなげられるのでは。個人としては接種前の食生活改善も一つ」と話した。
那覇市医師会の友利博朗会長は「腸内細菌が関与しているのは意外だ。医療現場でも腸内細菌の重要性が言われている」と述べ、今後の研究の進展に期待を示した。
研究結果は、国際学術誌「コミュニケーションズ・バイオロジー」に20日掲載された。
(中村万里子)
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