ヒラヒラなポケットにピンクの卵
海の巻貝には、拾って帰りたくなるようなきれいな貝殻がたくさんあります。生きた巻貝は、潮干狩りの獲物にもなりますね。でも、中には危険生物として触らないでほしい巻貝があります。それがイモガイのグループです。
イモガイ類は主に暖かい海に住む貝のグループで、種類がたくさんあり、大きさや模様は様々です。小型の種類で2cm程度のもあれば、大型だと20cmを超えるものもあります。猛毒の毒針で有名なアンボイナは大きい方で、10cm前後になります。
そんなイモガイ類ですが、生まれるときはみんなとても小さな卵です。そして、イモガイ類は卵を海中にばらまくのではなく、「卵のう」という袋に入った卵を、岩の裏側などに産みつけます。この卵のうは、まるで平たいポケットみたい。その大きさや形は、イモガイの種類によって少しずつ違うようです。産卵期は春から初夏。この時期に海草藻場などの浅瀬にある岩をそっとひっくり返すと、裏側に白いポケットが!もしポケットがピンク色に見えたら、中にピンクの卵が入っています。ポケットの先に空いた口から、ピンクの粒々が見えるでしょう。そして、イモガイ類にはしばらく卵を守る習性があるようです。卵のうのある岩の下に、イモガイのお母さんが隠れていることがよくあります。
私たちからは危険とされるイモガイ類も、海の生態系の仲間です。卵を守るお母さんを見ると、子どもたちが元気に旅立つのを応援したくなりますね!
Vol. 65 アジロイモ
Conus pennaceus
● 目:新腹足目 Neogastropoda
● 科:イモガイ科 Conidae
● 属:イモガイ属 Conus
動画撮影:
アジロイモ 2021年4月30日(浦添市 カーミージーの海)
イモガイ類の卵のう 2020年4月10日、2023年5月22日(浦添市 カーミージーの海)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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