たくさん食べて たくさん卵を産む!
海草藻場の浅瀬で、時々出会う大物。体長20cmもあるのに、写真ではなかなかその姿が伝わらない…。どこからどこまでが生きものの体なのか、どんな形をしているのかよく分からない生きもの。それがタツナミガイです。
全体像を上から見ると、ぽってりとした三角形。細い方の先に顔があります。ウサギの耳のような2つの触角、とても小さいつぶらな目。体全体に柔らかい突起があり、色は薄茶から緑がかったまだら色、中には黒っぽいものも。砂地の岩に海藻が生えているように見えて、遠目にはその存在に気づきません。冬から春に見ることが多く、夜に出歩く夜行性です。そのため、夜の干潟をライトを照らしながら歩いて、いきなり足下にいることに気づく、ということもしばしば。
タツナミガイは巻貝の親戚で、アメフラシの仲間です。なので、危険を感じるとアメフラシと同じように、赤紫色の汁を出します。貝殻は退化して、薄く小さな殻が体の中に埋もれています。背中の真ん中あたりをそっと触ると、中に貝殻があるの感じることができますよ。この貝殻が波の形に見えるので、「立浪貝」という名前になりました。
春から初夏は産卵の季節。「海そうめん」と呼ばれるひも状の卵塊を産み出します。アメフラシの卵塊は黄色いけれど。タツナミガイのは緑色。これが見つかれば、近くにきっと、大きくどっしりした生きものが隠れていると思いますよ。
Vol. 64 タツナミガイ
Dolabella auricularia
● 目:無楯目 Aplysiida
● 科:アメフラシ科 Aplysiidae
● 属:タツナミガイ属 Dolabella
動画撮影:
タツナミガイ 2021年1月25日、2023年3月24日(浦添市 てぃだ結の浜)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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