沖縄は23日、鎮魂の祈りに包まれる「慰霊の日」を迎えた。沖縄戦の組織的な戦闘が終結したとされる1945年6月23日から78年が経過するが、県内には今なお生活を脅かす不発弾が1880トン程度埋もれているとみられ、所有者不明土地は未解決、遺骨収集は難航するなど戦後処理は終わっていない。「戦後」は歳月を重ねる一方、政府による南西諸島の軍備強化や厳しさを増す国際情勢など、「新たな戦前」の岐路に立つ状況が指摘される。
糸満市摩文仁の平和祈念公園では午前11時50分から、沖縄県が主催する沖縄全戦没者追悼式が催される。新型コロナウイルスの規制緩和に伴い、今年は4年ぶりに一般参列者の入場や式典終了後の一般焼香も実施する。平和祈念公園内の「平和の礎(いしじ)」には新たに365人の名前が追加され、刻銘者総数は24万2046人となった。
追悼式で、玉城デニー知事が平和宣言を読み上げるほか、岸田文雄首相も昨年に続いて出席する。戦後日本の防衛政策を大きく転換する安全保障関連3文書を昨年末に決定し、沖縄を含む南西諸島の防衛力強化を打ち出した中での岸田首相の発言に注目が集まる。
一方、昨年7月に安倍晋三元首相、今年4月には岸田首相を狙った襲撃事件が続き、会場周辺は例年以上に厳重な警備態勢が敷かれる。
防衛省・自衛隊は2016年に与那国駐屯地を新設したのを皮切りに、今年3月には石垣市に陸上自衛隊石垣駐屯地を開設し、「南西諸島の空白を埋める」ための陸上自衛隊の離島配備が完了した。さらに、政府は安保3文書で那覇市に拠点を置く陸自第15旅団の「師団化」を明記し、与那国駐屯地に地対空ミサイル部隊、勝連分屯地(うるま市)に地対艦ミサイル部隊の追加配備を進める。
米軍普天間飛行場(宜野湾市)を名護市辺野古沿岸に移設するための埋め立て工事も続き、沖縄は今も軍事拠点としての役割を強いられている。
【関連記事】
▼慰霊の日は「あつ森」で一緒に祈りませんか 琉球新報オリジナルの島を公開 「平和の礎」疑似体験も
▼慰霊の日、摩文仁の警備厳重に 首相襲撃事件受けて来場者チェックを厳格化
▼礎なぞり涙をこぼした祖母、重なった78年前と今 平和の詩を朗読する平安名さん 「平和への思い伝えていける」