早く新しい貝殻を見つけなきゃ!
沖縄の言葉で「あーまん」と呼ばれるオカヤドカリの仲間。その中で、マングローブ林だけに住んでいる変わり者がいます。
それは、コムラサキオカヤドカリ。鮮やかな紫色のムラサキオカヤドカリは海岸などでよく見るので、それの小型のやつ?と思ったら、実は「濃い紫」=コムラサキ、という意味なんですね。
このコムラサキ、小さい頃はオレンジ色をしています。紛らわしい…。で、大人になるにつれて、濃いめの紫色に変化します。顔の前でちょこちょこと動く触角は、子どもも大人も赤みの強いオレンジ色で、とても目立ちます。
コムラサキは暖かい地域が好きで、昔は八重山諸島でしか見られませんでした。マングローブ林に住むので、貝殻もそこから調達します。西表島のマングローブ林にはキバウミニナという大型の巻貝がいて、コムラサキもこの貝殻を使っているようです。最近は分布を北に広げて沖縄島でも見ることができますが、沖縄島にはキバウミニナはいません。そうすると、サンゴ礁の巻貝の殻が運良く流れてくるのを待つか、カタツムリの貝殻を使うか。というわけで、沖縄島にいるコムラサキは、アフリカマイマイの貝殻に入っていることが多いです。
お腹の柔らかいオカヤドカリにとって、体に合った貝殻が手に入るかどうかは死活問題。沖縄島にやって来たコムラサキが大きく成長できるかどうかは、良い貝殻がどれくらい手に入るかにも左右されそうです。
Vol. 67 コムラサキオカヤドカリ
Coenobita violascens
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:オカヤドカリ科 Coenobitidae
● 属:オカヤドカリ属 Coenobita
動画撮影:
コムラサキオカヤドカリ 2023年6月16日(南城市 佐敷干潟)、2023年7月28日(豊見城市 漫湖)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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