第32軍司令部壕 第1坑道中央部付近でボーリング調査を開始 沖縄県 全体像の把握に向け 


第32軍司令部壕 第1坑道中央部付近でボーリング調査を開始 沖縄県 全体像の把握に向け  第32軍司令部壕の詳細調査で、第1坑道近くの壕中心部とされる地点でボーリングを実施する作業員=29日、那覇市の首里城公園
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 万里子

 太平洋戦争末期の沖縄戦を指揮した日本軍の拠点・第32軍司令部壕の保存・公開に向け、県は、未発掘区間調査の一環として、第1坑道の中央部付近でボーリング調査を28日から開始し、29日午前、報道陣に作業を公開した。


 県は本年度、第32軍司令部壕の未発掘区間の全体像の把握に向け、ボーリング調査を進めるほか、地上部の安全性の確認を行う調査や、第1・第5坑口周辺の試掘と表土除去を実施する。


 県がボーリングを実施するのは第1坑道の中央部に近い2地点。各地点で最大4本のボーリングを予定。想定より少ない本数で確認できた場合は、予算の範囲内でさらに第1坑道のボーリング調査を追加する。
 ボーリング調査で空洞が確認されればカメラを入れ、さらに坑道を確認できた場合は、レーザースキャナーで3次元データを取得する。ボーリング調査は応用地質(東京)沖縄営業所が担う。


 県によると、ボーリング地点は、米軍が沖縄戦の際に第32軍司令部壕の内部を調査し、まとめた米軍情報報告書を基に、樹木が茂る場所や崩壊している場所を避け、選んだ。同報告書では、地表から30メートル付近に坑道があるとする。
 ボーリング調査は、着手から3週間程度の調査期間を予定。現地作業の完了は来年2月中旬を見込む。
 県特命推進課の山城憲一郎課長は「今回の調査は非常に大事な調査だ。戦後78年間、これまで地下の中で静かに時を過ごしていた壕がそのまま埋まってしまうのか、今回の調査で明らかになって何かを語り掛けてくれるのか、県民の皆さまに温かく見守ってほしい。県としては、調査の安全性を第一に1つ1つ安全解明に向け調査を進めていきたい」と話した。


 第32軍司令部壕の保存・公開を巡っては、外部の有識者でつくる第32軍司令部壕保存・公開検討委員会(検討委)の提言書を踏まえ、県は今年7月に県の基本方針を策定。それによると2026年度に向け、第1坑口・坑道、第5坑口の整備を優先的に進めるとともに、その後の段階的な公開と活用についても検討するとしている。壕の具体的な公開の範囲や整備方法などを定める基本計画については、24年度に策定を予定する。
 沖縄戦を指揮した第32軍司令部壕に関する県民の関心は高く、県は第32軍司令部壕の保存・公開に向け、特設ホームページで情報を発信しているほか、地域住民を対象にしたフィールドワークも今月23日、25~26日に実施した。

(中村万里子)