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伊江村発「緋桜肉」をブランド化 食べやすくサクラのような赤身肉 “島産島消”で経産和牛の価値高める


伊江村発「緋桜肉」をブランド化 食べやすくサクラのような赤身肉 “島産島消”で経産和牛の価値高める 伊江島和牛の経産牛「緋桜肉」のブランド化で伊江村の地域活性化に取り組むイノベスタの根路銘一亮社長=19日、浦添市のイノベスタ社
この記事を書いた人 Avatar photo 玉寄 光太

 沖縄県内でEC(電子商取引)コンサルティングなどを手掛けるイノベスタ(浦添市、根路銘一亮社長)が、伊江村で出産を終えた黒毛和牛の肉を「緋桜(ひざくら)肉」としてブランド化する取り組みを始めている。和牛と言えばサシ(脂)の細かさや口当たりの良さが評価される傾向にあるが、イノベスタは出産を終えた「経産牛」の特長である脂身の少なさを「脂っこくなく、食べやすい」として価値を見いだした。村内での消費拡大を目指しながら地域の活性化を目指す。

 根路銘一亮社長(48)は元々、県外のインターネット通販大手企業で全国各地の特産物をネット販売する事業に携わっていた。しかし、地域に利益が還元されず、地域を置き去りにするような販売の在り方に疑問を感じるようになった。沖縄に戻った2020年7月にイノベスタを設立。県内事業者限定で県民向けに商品を販売する通販サイト「TODOQ(トドキュー)」を立ち上げた。

 同社が新たな取り組みとして着目したのは伊江村の経産牛だ。和牛生産が盛んな伊江村内では、これまでも「伊江島特選経産牛」として一部流通していたが、市場価値が低く低価格で販売されていた。

 サシの少なさから口の中でとろけるような食感はないものの、穀物中心の餌で長期間肥育するためサシが少ない経産牛の赤身肉は「ジューシーだが脂っこくなく食べやすい」(根路銘社長)。食べやすく低価格で販売ができる和牛肉という側面に価値を感じ、ブランド化することを決めた。

 ブランド名は「緋桜肉」。肉色が緋色のように赤く、沖縄らしいカンヒザクラのようであることにちなんでいる。

赤みが強い経産牛「緋桜肉」のランプ(左)(イノベスタ提供)

 同社は、緋桜肉の販路拡大に向け、あえて伊江村内での消費拡大を進める方針だ。根路銘社長は「本島で販路拡大を目指すことがビジネス的には正しい」とする一方、「地元の人がおいしく食べるからこそ、島外にも広がっていく」と述べ、地域を置き去りにせず、伊江島から緋桜肉を発信していく考えを示した。

 村内での消費拡大に向け、来年4月に伊江島で焼肉店を開業する予定だ。店舗にする物件は確保しており、開店に向けて準備中だという。

 伊江島産の和牛を取り扱う焼肉店を開くメリットについて、根路銘社長は「ステーキ店とは違い地元の野菜も同時に提供できる。村内の農家全体を支えたい」と話し、地産地消を掲げて島内の野菜を使った新メニューにも取り組む考えを示した。島内を訪れる観光客も呼び込むことで緋桜肉の認知度向上を図る。

 将来的には年間400頭を出荷し、約16億円の収益を目指す。根路銘社長は「地域に今あるものに価値があり、地域活性化につながるということを伊江島で証明したい」と意気込んだ。

(玉寄光太)