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画面に現れたのはスーツ姿の男。「ドラマで見るような取調室に座って、ドラマで出てくるような警察手帳を出してきた」。男性が投げかける質問への受け答えもスムーズだったという。個人情報を聞かれた後、執行予定という「逮捕状」を見せてきた。逮捕されて20日間は身柄が拘束され、口座も1年半凍結されると告げた。
■「検察官」も登場して「資金調査」
「それは厳しい」と話す男性に「警察官」が示したのは「資金調査」だった。そこで事件の担当という「検察官」の男が登場する。ビデオ通話から切り替わり、声だけのやり取りの中で「検察官」が持ち出してきたのは、A県警に来て通帳などを預け「資金調査」を受けるという手続き。2~3週間ほどA県に滞在しないといけないとも告げられた。
男性は仕事の都合などでA県警に行けない場合についても聞いた。「検察官」はA県警に来なくてもできる「資金調査」の方法を提示した。口座情報を伝えた上で、口座にある全額を指定口座に送るというものだった。
「出入金の履歴を調べるなら、金融機関に問い合わせればいいのに」。男性は違和感を抱いた。それでも信用したのは「検察官」がA県警に来る方が要する時間も短いことなど、現金を振り込む方向に誘導してこなかったためだった。男性は仕事を長期で休むなどの負担などを考慮し、振り込みの手段を選択した。
■「そんな刑事はいない」
男性にまた疑念を抱かせた要求があった。それは振込先が個人口座だったこと。「検察官」は事件の被害者の口座で、現在は捜査で使用しているというような説明をしてきたという。
「お金は絶対に返ってくるのか」と男性は確認を重ねた。すると「資金調査」は必須ではないし、やらなくても良い。やらなければ逮捕されて、口座が凍結されるだけと言われ、男性は押し黙るしかなかった。
男性は約80万円を、指定された大手都銀の口座に振り込んだ。「資金調査」が終われば返金手続きをすると告げられ、通話は終わった。「疲れて根負けした感じもあった」
違和感がぬぐえなかった男性がA県警に連絡すると「非通知からの連絡はしない」「そんな刑事はいない」などと返された。「やっぱりか」。振り込んでから30分ほど経過していた。最寄りの警察署にも相談したところ、詐欺だと指摘された。
男性が金を振り込んで数日後、再び「警察官」から連絡があった。すでに詐欺だと把握していた男性。警察からはもうやり取りしないように言われていたが、どうだまし取ろうとしているのか興味があった。
連絡は、一つ目の口座の「資金調査」が終わったこと、返金処理を進めること、そして二つ目の「資金調査」をすることについてだった。
二つ目の口座の「資金調査」に応じるふりをした男性。「返金はいつされるのか」と聞くと、処理中なので、その間に二つ目の口座から現金を振り込むよう要求された。「返金してくれた後に、振り込みますよ」。男性がそう伝えると、電話はぶつっと切れた。「警察官」とはもう連絡は取れない。