潮が引いたらご飯どき
潮の引いた干潟、岸辺に立って足元に目をやると、まず見つかる生きものが、たぶんこれ。シオマネキの仲間です。カニの中でも片方のハサミが大きいのが特徴で、これを振って、海の潮をおいでおいでと呼ぶような姿からこの名がつきました。
でも、実際に呼んでいるのは潮ではありません。実は、片手が大きいのは全てオス。大きなハサミで強さやかっこ良さをアピールします。これを大きく振って、メスを呼ぶと同時に、他のオスを追い払ったり、ケンカしてハサミを見せつけ合ったり。時には相手のハサミをつかんでぶん投げることも!
メスは、大人になっても両手が小さいまま。この小さいハサミは食事用なんです。食べるのは、地面の泥や砂に混ざった有機物。泥や砂をちまちまとつまみ、口に運んで餌と選り分けます。そしていらない泥や砂をお団子にしてポイ。オスは片手で、メスは両手でご飯。メスはその分、栄養をつけて卵を産むんですね。
シオマネキは潮の干満に合わせて暮らしています。潮が引いて巣穴から出てきたら、体の泥を掃除してからお食事タイム。ひたすら食べて、満足してからようやくオスがハサミを振り始めます。
沖縄にはシオマネキ類が9種類いますが、それぞれ食べやすい泥や砂粒の大きさと湿り具合が違っていて、干潟の場所を棲み分けています。そんなふうに思いながら、干潟のカニをじっくり観察するのも楽しいですよ。
Vol. 3 ベニシオマネキ
Uca crassipes
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:スナガニ科 Ocypodidae
● 属:シオマネキ属 Uca
動画撮影:
ベニシオマネキ・オス 2010年6月28日 浦添カーミージー
ベニシオマネキ・メス 2011年7月2日 漫湖
ベニシオマネキ・メス(拡大) 2010年7月12日 浦添カーミージー
オキナワハクセンシオマネキ・オス 2018年6月4日 恩納村
ルリマダラシオマネキ・メス 2011年6月19日 浦添カーミージー
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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