那覇市の閑静な住宅街にあるマンション駐車場に県警の捜査車両が止まった。まだ夜が明けきらぬ薄暗い街並みをブレーキランプが赤く染める。那覇市議会9月定例会最終日の翌10月5日早朝、那覇市議会前議長の久高友弘被告(75)=収賄罪で起訴=の自宅に県警が家宅捜索に入った。現金5千万円授受疑惑の発覚から半年以上を経ての強制捜査着手は県民に衝撃を与えた。
那覇市有地を巡り、議長室で不動産コンサルタント元代表の被告(73)=贈賄罪で起訴=らから現金計5千万円の供与を受けた久高被告らがその見返りに市議会などで便宜を図ったとして、計5人が起訴された贈収賄事件。被告が公表に踏み切ったことで議長室での現金授受は公のものとなった。市有地に関する資料を巡り、久高被告が不動産コンサルタント元代表の被告を背任容疑で刑事告発する動きを見せたことなどが公表理由の一つだとされる。報道も熱を帯び、真相解明に県民の注目が集まった。
県警は現職議長による汚職事件とみて、複数の関係者から任意で事情聴取を進めて裏付け捜査を徹底する一方で、強制捜査のタイミングをうかがっていた。久高被告の政務活動費の不正受給による詐欺の疑いを足がかりにした10月の一斉家宅捜索から11月には5人を摘発と、年内解決に向けギアを上げていった。
捜査関係者は「疑惑発覚から時間が経過しており、口裏合わせや偽装工作などもみられ、緻密な捜査が求められた」と振り返る。事実を裏付ける物証の収集、そして被告ら関係者に事態の進展を印象付けるためにも強制捜査が求められたという。同関係者は「結果、家宅捜索先行が功を奏した」と胸をなで下ろした。
久高被告は逮捕前、複数回にわたり本紙取材に応じた。その都度、回答は変遷し、現金の私的流用や収賄の事実を認める発言もあった。一方、「市民のために取り組んできた」との見解は貫く姿勢を見せた。市議として延べ10期のキャリアを持ち、衆院選や那覇市長選で自民公認・推薦候補の選対本部長も務めてきた久高被告。政治信念を貫いたのか―。影響力を行使したのか―。来年にも始まる公判での発言に耳目が集まる。
(高辻浩之、大嶺雅俊)