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沖縄戦 何を描いても頭を離れず 新里堅進さん 漫画家45周年 見えない力に押されてきた


沖縄戦 何を描いても頭を離れず 新里堅進さん 漫画家45周年 見えない力に押されてきた トークイベントで展示された新里堅進さんの作品と原画
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 「沖縄決戦」や「ハブ捕り」などを書いた漫画家の新里堅進さん(76)のデビュー45周年を記念したトークイベントが14日、那覇市のブックカフェ&ホールゆかるひであった。新里さんは「何を描いても沖縄戦が頭から離れない。見えない力に押されてやってきた」と、45年の歩みを振り返った。

 イベントは落語イベンターの知花園子さんを中心に企画し、司会はシネマラボ突貫小僧・代表の平良竜次さんが務めた。

 幼い頃から絵を描くことが好きだった新里さん。高校生の時『沖縄健児隊』にあった少年たちの手記に心を打たれた。「漫画なら少年たちを表現できる」。そこから漫画家を目指した。タクシー運転手として働いた頃は客待ち時、乗車記録の裏に漫画を描くことも。約200枚描きためた頃、出版社から声がかかり『沖縄決戦』が出版された。沖縄戦を漫画にしたことに、ちゃかしていると批判されることもあったが、よくやったとの声も多かったという。

 沖縄戦をテーマとする時、服装から天気まで徹底して取材する。しかし時には「漫画にする意味はあるか」と自問自答することもあった。「それでも沖縄戦を劇画に残すのが夢。やらなくてはという、見えない力に押されてきた」と語った。

自身の漫画家人生を振り返る新里堅進さん。「何を書いても沖縄戦を思い出す」などと語った=14日、那覇市のブックカフェ&ホールゆかるひ

 仕事中に同僚と西原町のガマの中でハブに出くわしたことは『ハブ捕り』につながった。琉球新報で連載され、日本漫画家協会賞優秀賞に入選した。そんな『ハブ捕り』にも沖縄戦が登場する。「何を描いても沖縄戦が離れない」と新里さん。世界で戦争が起こり、沖縄でもミサイル配備などの動きがある現状に「(78年前の沖縄戦が)第1次沖縄戦と呼ばれる時代が来るのではとこわい」と不安視した。

 新作『やんばるの戦い』は来年発刊予定。12月には東京での同人誌即売会「コミティア」に出展予定で、渡航費をクラウドファンディングで募っている。45年たってもなお、挑戦を続ける新里さんは「心の中に燃えるものを持ってほしい」と若い人を激励した。

 会場いっぱいに観客が詰めかけた。伊波園子さん(39)は「うちなーぐちを漫画で自然に描けるのは堅進先生だけ。琉球新報でぜひ再版してほしい」と語った。

 (田吹遥子)

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