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有事の際の宮古・八重山住民の避難、県が受け入れ先と調整せず 国から“丸投げ”の計画、実効性なく


有事の際の宮古・八重山住民の避難、県が受け入れ先と調整せず 国から“丸投げ”の計画、実効性なく 沖縄県庁(資料写真)
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 有事の際に、宮古・八重山地方の住民ら12万人を九州に避難させる「図上訓練」などを沖縄県が実施する中で、受け入れ先とされる九州の自治体と協議が始まってないことが16日までに分かった。県防災危機管理課は「想定の一案だ。(受け入れ先となる場所と)調整はしていない」と述べた。避難計画は内閣官房が基本方針を立てており、国は具体的な避難場所に加え、期間や予算も算出していない。国から12万人の避難という計画が“丸投げ”された状態で、実効性を伴わない訓練計画だけが一人歩きしている。

 住民避難は国民保護法に基づき、他国からの武力攻撃を想定している。県内では宮古島市、多良間村、石垣市、竹富町、与那国町の5市町の住民や観光客ら12万人を福岡県と鹿児島県の空港と港を使用して輸送することを計画している。

 国の計画に自治体が対応に追われる中、避難対象となる先島の住民からは「最初からどう考えても無理な話だ」との声も上がる。

 今年3月、沖縄県は「武力攻撃予測事態」を見据え、行動計画に沿った避難の模擬訓練となる「国民保護図上訓練」を初めて実施。県の試算によると民間航空機と船舶を活用し1日当たり約2万500人を輸送でき、全住民を九州に避難させるまでに9~10日程度かかると見込んでいる。

 一方、受け入れ先とされる福岡県と鹿児島県の担当者は、沖縄県が実施する九州への避難を想定した訓練を内閣官房などから照会されているとするが、沖縄県からの連絡は「一切ない」と回答した。

 福岡県の担当者は「何も算出したことはない。もし話が来たら調整や検討に入るのでは」と語り、鹿児島県の担当者は「情報はあるが話はない。本県でも離島の住民避難があるので、まずはそこに取り組んでいる」と話した。鹿児島県は屋久島や口永良部の住民約1万2千人の島民を鹿児島県内と熊本県で受け入れを想定しており、熊本との話し合いが進んでいるという。

 福岡、鹿児島両県ともに実際に受け入れが可能かとの問いに「検討、調整が要る」とした。県防災危機管理課は「あくまでも訓練案」と強調し、受け入れ先との協議予定は未定としている。

(新垣若菜)

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