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【記者のルポ/2】歓迎なき「賛成」 「辺野古も普天間も手放さないだろう」<歩く民主主義 100の声>


【記者のルポ/2】歓迎なき「賛成」 「辺野古も普天間も手放さないだろう」<歩く民主主義 100の声>
この記事を書いた人 Avatar photo 南 彰

 >>【記者のルポ/1】普天間周辺 募る政府不信 辺野古「いくらお金使っても失敗」 

 1995年の米兵による少女乱暴事件を受けて、日米両政府が翌年に打ち出したのが「普天間返還」だ。ただ、名護市辺野古での新基地建設とセットにされ「5~7年以内の返還」の約束はほごにされてきた。

 日米合意から27年。その間、5人の県知事の中で辺野古での埋め立て工事を承認したのは、10年前の仲井真弘多氏だけだ。県民投票などで「反対」の民意が示される中、後任の知事が仲井真氏の判断を覆そうと試みてきた。

 「もうこれ以上、沖縄を犠牲にすることはやめてほしいが仲井真知事もいろいろ考えたと思う。一度決めたものを覆すのは受け入れられない。市街地にある基地は1日も早くなくす。なんでも反対では返ってこない」

 新垣惠子さん(83)は辺野古賛成に「プラス(+)1」と答えた。「仕方がないという気持ち。歓迎ではない」という留保付きだ。沖縄戦の経験を語りながら、日本政府への思いを訴えた。

 「国は以前も沖縄を犠牲にした。基地に反対するから予算を減らすのは脅しで、誠意がない。沖縄が犠牲になってきたことを理解して、ちゃんと生活を保障してほしい。平気で沖縄に押し付けている政府の姿勢は改めてほしい」

 新垣さんは「普天間早期返還のため」という政府の説明について、「信頼する」の中で最も弱い「+1」を選んだが、全体では「信頼しない」を選んだ人が大半だ。「辺野古賛成」でも「信頼しない」は13人に上った。

 「普天間飛行場は町のど真ん中にある。危険性除去を進めるべきだ」と言って、辺野古建設に強く賛成する「+3」を選んだ江島和行さん(75)もその1人だ。「信用できない。返還はこれまでも先送りされてきた」と「マイナス(-)2」を選んだ。

 「政府は口だけ。すぐに閉鎖は無理だと思う」(30代の営業職男性)

 「普天間を早く撤去してほしいという思いはあるが、日本政府は沖縄の状況を固定化しようとしている。ますます日米合同訓練が盛んになり沖縄全域が演習場になっている」(80歳の清掃員男性)

 特に周辺住民が疑念を膨らませているのは、米軍の「本音」があからさまになってきているからだ。在沖米軍幹部は11月7日、メディアワークショップで「軍事的に言えば普天間飛行場の方がいい」と語った。さらに辺野古完成後も普天間飛行場を使い続けたいかという記者の質問に「軍事的な立場だけで言えばイエスだ」とも述べた。「普天間固定化」を示唆したこの発言を口にした周辺住民は10人に上った。

 「辺野古賛成」を選んだ40代の飲食業の男性は、県民投票でも賛成票を投じ、知事選では政権与党が推す佐喜真淳・前宜野湾市長を応援してきたが、政府説明については「信頼する」と答えず、「どちらとも言えない」とした。

 「台湾有事も言われる今の状況では、政府は辺野古も普天間も使いたがり、どっちも手放そうとしないだろう。自分が首相だったとしてもそうする。米軍幹部の発言は本音だと思うよ」