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「重要海域」進む埋め立て 辺野古・大浦湾 識者「国家戦略と矛盾」 環境省選定 豊かな生態系


「重要海域」進む埋め立て 辺野古・大浦湾 識者「国家戦略と矛盾」 環境省選定 豊かな生態系 豊かな海草藻場が広がる大浦湾=2021年9月3日撮影、名護市(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 環境省が2014年に選定した「生物多様性の観点から重要度の高い海域」には、名護市辺野古・大浦湾を含む一帯が含まれている。一方、辺野古や大浦湾では新基地建設による埋め立てが進み、環境への影響が懸念されている。海域の選定がすぐに規制に結びつく法的拘束力はないが、辺野古・大浦湾の埋め立て許可の根拠となる公有水面埋立法の承認要件には反するのではないかと批判する専門家もいる。環境団体からも、生物多様性を守るという国家戦略との矛盾が指摘されている。

 1992年の地球サミットによる国連生物多様性条約をきっかけに、署名した各国は国家戦略の作成や生物多様性の保全などの取り組みが求められるようになった。2021年のサミットでは、さらに30年までに陸と海の30%保全を目指す「サーティーバイサーティー」が掲げられた。日本の保護水域は10%台で、保全に乗り出す動きが加速している。

 環境省は14年、日本の排他的経済水域(EEZ)内で「重要海域」を初めて選定し、辺野古や大浦湾を含む本島中北部の海岸も選ばれた。選定から10年が経過し、同省は24年度から見直しを進める予定だ。

 公表されたサイトでは、この海岸を「サンゴ礁海域と海草藻場が広がり、絶滅危惧種ジュゴンの発見例が多い」と記載している。大浦川河口部のマングローブ林についても紹介している。

 環境省によると、「重要海域」を基に展開した施策もある。19年に自然環境保全法が一部改正され、20年に沖合海底自然環境保全地域制度が創設された。「重要海域」を基に伊豆・小笠原海溝などの4カ所が指定された。

 辺野古の新基地建設に関する環境影響評価(アセスメント)などに対し、長年、問題点を指摘してきた沖縄大名誉教授(環境学)の桜井国俊さんは、辺野古・大浦湾の埋め立て許可の根拠となる公有水面埋立法の承認要件で「国や地方公共団体の法律に基づく計画に背いていないこと」と明記している点を挙げる。

 生物多様性基本法を基に国家戦略が策定されたことに触れ、「環境保全のために大事な海を設定しようとしている中で、埋め立ててはならないという明確な根拠になる。沖縄の海の中でも特に辺野古・大浦湾は目玉中の目玉だ」と強調した。
(慶田城七瀬)