南城市が運営し、糸数自治会が管理する同市玉城糸数の糸数アブチラガマ案内センターの展示が「戦争を賛美する内容だ」「『靖国』のようになっている」と来館者や平和ガイドから指摘する声が上がっている。日章旗10枚や日本兵の写真、銃剣などが展示され、約300点の展示の多くが日本兵の所持品という。
案内センターの當山晃事務局長(76)は「戦争を賛美する意味はない。戦争当時、日の丸を持たされたことを伝えたい。ある物を全部展示しただけだ」と説明している。
平和ガイドらが問題視している展示は、入壕の受付場所の隣の部屋にある。「武運長久」「神洲護持」などと書かれ、寄せ書きされた日章旗や軍人の写真などが壁一面に掲示されている。ほかにも海軍兵の軍帽や万年筆など日本兵の所持品とみられる物が並んでいる。
當山事務局長によると、県内の米軍基地に勤めていた米軍属の収集品を市民が譲り受け、8年ほど前にセンターに寄贈した。糸数区の区長だった當山氏がその後、事務局長に就任し、5年ほど前に寄贈の資料を展示し始めたという。外部の有識者を入れた展示の検討会議などはなかった。
27日はアブチラガマで県教職員組合(沖教組)のフィールドワークがあった。沖教組島尻支部特別執行委員の下地史彦さんは「まるで靖国神社の遊就館のようだ。住民の視点で展示をしてほしい」と話した。平和ガイド団体「語りつぐ沖縄平和の会」会長としても活動し、年に7、8回アブチラガマ内を案内する平和学習で訪れる。
下地さんは「アブチラガマは沖縄戦を追体験できる大事な場所だ。僕らガイドももっと注意して見ておくべきだった。意図を持った展示ではないが、仲間にも呼びかけてどうしたらいいか話し合いたい」と展示を見詰めた。
糸数アブチラガマ 沖縄本島南部の南城市玉城糸数にある全長約270メートルの自然洞窟。戦時中、当初は糸数集落の住民の避難場所だったが、日本軍の陣地壕や倉庫、沖縄陸軍病院の分室としても使用された。沖縄戦を追体験する場として修学旅行など平和学習の利用者が多く、現在は年間約9万人が訪れる。
【識者】戦争否定の心、踏みにじる 糸数アブチラガマ案内センター展示 石原昌家氏(沖国大名誉教授)
糸数アブチラガマ案内センターの日の丸や軍人写真の展示は、2016年3月、アブチラガマの真上に南城市が設置した「旧日本軍89式15センチカノン砲」「旧日本海軍9 …