糸数アブチラガマ案内センターの日の丸や軍人写真の展示は、2016年3月、アブチラガマの真上に南城市が設置した「旧日本軍89式15センチカノン砲」「旧日本海軍93式発射魚雷」の展示と連動して、「艦砲ぬ喰えー残(ぬ)くさー」という、戦争否定の沖縄の心を踏みにじっている。
沖縄の根底にある「非軍事による平和」ではなく、無意識だったとしても戦争につながる「軍事による平和」の意識が具体的な形で現れている。
1975年、旧県立平和祈念資料館の開館当初に、全く意識しないでただ保管していたから日の丸を展示したという状況と全く同じだ。
県民や戦争体験の記録を担ってきた人たちは、膨大なエネルギーを注いで、戦争に関わる資料館の展示はどうあるべきか熟慮を積み重ねてきた。日本軍を賛美するような展示を徹底的に批判し78年に、人々を殺りくした兵器は「戦場跡の残骸」というオブジェとして展示し、戦争を否定する展示方法にたどり着いた。
しかし案内センターの現状は、75年当時の振り出しに戻っている。こんなにむなしいことはない。兵士の遺品の扱いについては「非軍事による平和」の視点から、市史編さんを担当した人も含めながら展示方法を話し合うべきだった。75年から蓄積されている展示方法を、県内各地の戦争に関わる資料館や平和祈念資料館と連携を取り合いながら考えていくべきだ。 (平和社会学)
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【識者】戦争否定の心、踏みにじる 糸数アブチラガマ案内センター展示 石原昌家氏(沖国大名誉教授)
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琉球新報朝刊