コンテナ内にある機械がゴトゴトと音を立て、白い発泡スチロールを細かく砕いた。時々キュッキュとこすれる音が響き、近くで会話をするのもやっとだ。昨年12月下旬の昼、那覇市松山にある飲食店「琉球かさ屋」を経営するあき社長こと玉城あきさん(39)=宜野湾市=は作業着にマスク、長靴と、いつもとは異なる装い。リサイクルするため粉砕した発泡スチロールを身長と同じくらい大きな袋に詰め、運び出した。
自身が立ち上げた会社で受注した事業で「夜だけでなく、昼の仕事にも慣れてもらいたい」と、店のスタッフも作業に加わってもらう。個人宅やホテルの清掃業も担っており、事業拡大を図りたい考えだ。
普段は夜に開店する琉球かさ屋だが、月に一度は午前8時半から、経営者らが集う交流会の会場になる。参加者が次々とのれんをくぐり、カウンター席が埋まる。スタッフがキッチンとカウンターを行き来し、にぎわいを見せていた。玉城さんと付き合いの長い人も多く、ある参加者は「シングルマザーとして苦労もあったと思うが、自ら道を探し歩いてきた。社会課題に向き合う彼女の姿に、応援したい気持ちになる」と語る。
シングルマザーやナイトワーカーのほかにも、普段は別の仕事をしながら店でアルバイトするスタッフもいる。玉城さんは「夜の仕事が長い女性たちが、これまで接点がなかった人と一緒に働けるメリットもある」と考えている。
全てが順調に行くわけではない。多くの課題に直面してきた。あるスタッフは再び夜の仕事に戻った。簿記などを学ぶ月一度の学習会も、継続的な出席が難しい人もいる。親や交際相手の名義人になり借金を抱えるなど、金銭面で苦労した人もいた。
自宅にエアコンのないスタッフがいれば安く買い取れるものはないか探し回り、入居審査に通らず引っ越しができなかったスタッフには、店の一角に荷物置き場を設け相談に乗る。給料に見合った家賃や生活費を計算したり、ライフプランを一緒に立てたりした。
学習会の頻度を増やし、店として明るいニュースを届けることが今年の目標。そうやって彼女たちが抱える一つ一つの問題に共に向き合う。時間はかかる覚悟だ。「小さな活動だが、私なりにできる支援を続けていく。関わった人たちが支援の在り方を考えるきっかけになれば、より優しい社会に近づくかもしれない」。そう願いつつ、今日も全速力で。
(吉田早希)
(第2部おわり)