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「人生はデザインできる」 夜から昼の仕事へ、自立を伴走支援<雨のち晴れ>第3部「寄り添う先に」(8)


「人生はデザインできる」 夜から昼の仕事へ、自立を伴走支援<雨のち晴れ>第3部「寄り添う先に」(8) インタビューに答える玉城あきさん=1月29日、那覇市泉崎(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 吉田 早希

 1月に開始した連載「雨のち晴れ」は、那覇市松山にある飲食店「琉球かさ屋」でナイトワーカーやシングルマザーの女性スタッフを支える、代表の玉城あきさん(39)の半生や活動を追った。最終第3部は、ひとり親家庭を支援する民間団体や、行政担当者に支援の在り方や課題を共有してもらう。初回は玉城さんに、伴走する中で見えてきた課題や今後の展望を聞いた。

 ―店は2月で開業1年を迎えた。

 「貧困問題をなんとかしたい、という思いが私の活動の原動力。今年は昼の清掃業をさらに伸ばしたいと思っている。夜働いている人たちを昼の清掃業へ、その後は資格取得などを経て昼職への就職につなげたい。今はその仕組み作りに取り組んでいる」

 ―活動の難しさや課題は。

 「私が関われるのは10人程度。支援の限界がある。また、スタッフとの会話でよく感じるのは『自分で自分を幸せにしよう』と思えていないこと。仕事で関われても、(私生活など)それ以外の時間で受けるネガティブな影響が強く、次の出勤まで期間が空いたり、シフトをこなせなかったりする課題もある。生活習慣や環境の改善が非常に重要だと思う」

 ―玉城さんが実践する伴走型の支援は、一人一人に多くの時間をかけている。

 「伴走するにはお金も時間もかかり、支援する側も疲弊する。やりたがらない人は多いと思う。一方で、例えばお金の支援があっても、管理の仕方や有効な使い方が分からなくて、身だしなみに使ったり薬物に走ったりする場合もある。自立して生活できる環境を整える支援が必要だ」

 「うちのスタッフも、小学校や中学校から学校に通えていないことが多い。彼女たちが大人になって成長できる“最後のとりで”が仕事だ。支援が必要な人を育ててくれるような企業が増えてくれたらと思う」

 ―支援を継続するモチベーションは。

 「昔は私も将来が見えなくて、40歳近くまで生きる予定はなかった。一つ一つ課題をクリアして、人生は自分でデザインできると実感した今、生きることが楽しいと思える。それをスタッフのみんなにも伝えたい。彼女たちが自立してロールモデルとなって、次につなげていってほしい」

 (聞き手・吉田早希)


 たましろ・あき 1984年生まれ、宜野湾市出身。シングルマザーとして子育てをしながらキャバクラで働き、2023年2月、那覇市松山に会員制の飲食店「琉球かさ屋」を開業。別会社も立ち上げ清掃業を中心に展開する。