冬の海で子育て ~ザトウクジラ~ <沖縄・海の生き物たち Vol. 74>


冬の海で子育て ~ザトウクジラ~ <沖縄・海の生き物たち Vol. 74> 座間味島沖にて
この記事を書いた人 アバター画像 外部執筆者

岸からも見えるクジラの噴気や背中

沖縄の冬、海には大物が来ます。ザトウクジラです。体の大きさは最大15m、これはマンション5階分の高さと同じ。体重は30~40トン、つまり軽自動車30~40台分。こんな大きな生きものが生きていけるのは、水の中だから。重力を受ける陸上では、大きな体を支える丈夫な骨格と、それを動かす筋肉が必要になり、さらに体が重くなって大変です。また呼吸をする肺も、大きくなると体の重みでつぶれやすくなります。だから陸上では、かつての大型恐竜以上に大きな動物は生まれていません。しかし、海の中なら大丈夫。水の浮力で体を支え、陸上よりも大きな体で生きていくことができます。

残波岬の灯台下より
残波岬の灯台下より

夏はベーリング海やアラスカなど北の海でたっぷり餌を食べ、冬に繁殖と子育てのために小笠原や奄美・沖縄にやって来ます。沖縄に来るのは1~3月。慶良間諸島ではボートを出してのホエールウォッチングが盛んですが、実は岸からクジラを見ることもできます。残波岬の灯台からは、時折沖を通るクジラの噴気や背中を眺めることができますよ。

慶良間諸島の海は島かげが多く、水深も浅く、海が荒れる冬でも赤ちゃん連れの親子クジラが安心して過ごせる場所のようです。また、ザトウクジラは尾ひれの下側の模様で個体識別が可能です。何年も慶良間に通い続けているクジラがいることがわかっています。

ザトウクジラの尾ひれの模様
ザトウクジラの尾ひれの模様

先日、座間味島の近くで一組の親子を観察しました。お母さんのそばでぽんぽん飛び跳ねて遊ぶ子クジラ。元気に育って、来年また沖縄に戻って来てくれたら嬉しいですね。


Vol. 74 ザトウクジラ

 Megaptera novaeangliae

子クジラのブリーチング
子クジラのブリーチング

● 目:鯨偶蹄目 Cetartiodactyla

科:ナガスクジラ科 Balaenopteridae

● 属:ザトウクジラ属 Megaptera


写真撮影: 

ザトウクジラ  2024年2月16日、2017年1月24日(座間味島沖)、2023年3月14日(残波岬)

撮影・執筆
鹿谷麻夕(しかたに自然案内)

しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。