「アオ」だけど、甲羅は赤茶色
海で出会えたらみんな大喜びのウミガメ。中でも、沖縄でスノーケルやダイビングの時に一番よく見られるのがアオウミガメです。
アオウミガメは、ツルッと丸みを帯びた甲羅で、背中は赤茶色。「アオ」という名前の由来は見た目ではなく、体の中の脂肪の色が緑色を帯びているからだそう。その色の由来は、実は食べ物にあります。
よく、ウミガメの好物はクラゲ、という話を聞きますね。実はウミガメは種類によって食べ物の好みがあり、クラゲを主に食べるのは、甲羅にたてすじのあるオサガメです。アカウミガメは海底の貝やカニが好き。タイマイは尖ったくちばしでサンゴ礁のすきまのカイメンをかじります。そしてアオウミガメは、主に海草や海藻を食べます。その植物の色素が脂肪に色をつけるのだそう。ただ、たまにクラゲや他の生きものも食べるので、アオウミガメは草食に近い雑食と言えます。
潮の引いた海草藻場を歩いていると、海草の葉が切り取られた所があちこちに見つかります。アオウミガメがかじった痕です。潮が満ちたらかなり岸の近くまでやって来るので、身近に見られることも。その反面、最近はアオウミガメの数がとても増え、西表島や石垣島ではウミショウブという海草が食べ尽くされてしまいました。海草がなくなったら、海草藻場の生きもの達のすみかがなくなり、生態系が崩れてしまいます。
なぜ急にアオウミガメが増えたのかは、良く分かっていません。天敵のサメが減ったのか、ウミガメ自身に別の理由があるのか。海の生きもの同士のバランスは、まだまだ分からないことばかり。海の変化を注意深く見守っていく必要がありそうです。
Vol. 79 アオウミガメ
Chelonia mydas
● 目:カメ目 Testudines
● 科:ウミガメ科 Cheloniidae
● 属:アオウミガメ属 Chelonia
撮影:アオウミガメ 2017年10月18日(座間味村阿真)、2023年11月11日(瀬戸内町大島海峡)
リュウキュウスガモ 2024年6月23日(浦添市てぃだ結の浜沖)
しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。
2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。令和4年度沖縄県環境保全功労者、ジャパンアウトドアリーダーズアワード2024特別賞。