サンゴは海の大先輩 ~ミドリイシの仲間~ <沖縄・海の生き物たち Vol. 80>


サンゴは海の大先輩 ~ミドリイシの仲間~ <沖縄・海の生き物たち Vol. 80> 枝状のミドリイシ類は小魚のゆりかご
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貴重な生物多様性の宝庫

今年の夏は暑かった!本土では猛暑日が珍しくなくなりました。海に囲まれた沖縄も、これまでせいぜい33度までだったのが、7月、那覇で36度に達した日も!ほとんど体温と変わりませんね。

海はどうでしょう。水は空気より温まりにくく、冷めにくいので、大気よりも安定しています。しかし海面温度は7月はじめに30度を超え、8月もずっとそのまま。大潮の干潟や浅瀬はお風呂みたいで、こんな水温では生きものたちはたまりません。

チョウチョウウオがサンゴのポリプをつまみ食い

7月半ば、浦添西海岸のサンゴ礁はまだ元気でした。ここには沖から岸に向かってサンゴ礁の切れ目の水路があり、その周囲に素晴らしいミドリイシ類のサンゴ群落が見られます。しかし8月、各地でサンゴの白化が報告され始めました。沖縄のサンゴは適温が25〜28度と言われ、30度を超えると体内の褐虫藻が抜け出して白化が始まります。白化しても、その後すぐに水温が下がれば白化は元に戻ります。しかし、水温が高いまま何週間も続くと、サンゴは耐えきれずに死んでしまいます。今年、沖縄のサンゴがどこまで耐えてくれるか、夏を過ぎてみないと分かりません。

白化したミドリイシ類

世界の海の面積のわずか1%にも満たないサンゴ礁。そこに海洋生物種の4分の1が暮らすと言われる、生物多様性の宝庫です。沖縄の島々は、その貴重なサンゴ礁に囲まれています。そして、サンゴはおよそ5億年前のカンブリア紀から地球上で命を繋いできた、私たちの大先輩。この数十年の温暖化でそれを失うのはあまりにもったいないし、この貴重さを本当に理解したら、サンゴ礁の埋め立てなんてできませんよね。

この連載は今回でおしまいです。動画や写真の多くは、浦添西海岸で撮影しました。読者の皆様に感謝すると共に、何より美しくユニークな姿を見せてくれる生きものたちが、これからも海で命を繋いでいくことを、心から願っています。

浦添西海岸の沖に広がるテーブル状のミドリイシ類

Vol. 80 ミドリイシの仲間

 Acropora spp.

枝状のミドリイシ類

● 目:イシサンゴ目 Scleractinia

科:ミドリイシ科 Acroporidae

● 属:ミドリイシ属 Acropora


撮影:枝状・テーブル状のミドリイシ類 2024年7月15日(浦添市てぃだ結の浜沖)

   白化したミドリイシ類 2024年8月3日(恩納村恩納)

撮影・執筆
鹿谷麻夕(しかたに自然案内)

しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。

2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。令和4年度沖縄県環境保全功労者、ジャパンアウトドアリーダーズアワード2024特別賞。