生まれ育った沖縄への愛が、沖縄を取り巻く理不尽な状況への怒りが、石川真生さん(70)を突き動かす原動力となっている。
1970年代にカメラを手にしたその時から、ぶれることなく沖縄の「いま」をフィルムに収め続けてきた。国内有数の権威ある写真賞、第43回土門拳(どもんけん)賞の受賞に「ひたすら自分が撮りたいものを撮り、ウチナーンチュとしてやらなきゃいけないことをやり続けた結果が評価された」と喜んだ。
石川さんが主に撮り続けるのは、市民生活を脅かす米軍基地や自衛隊の実態と、政府からの弾圧にあらがいながらも、たくましく生きる人々の姿。どの現場でも、時間をかけて相手との信頼関係を築いた上でシャッターを押す。作品は「ドキュメンタリーというより自身の感情記録に近い」。何気ない日常ではなく、テーマを捉えた上で撮影に臨むスタイルも大きな特徴だ。
昨今は大病を患いながらも、ライフワークとしている「大琉球写真絵巻」や、自衛隊基地の配備に揺れる石垣や宮古、与那国などの離島で現在進行形で撮影に挑んでいる。「まだまだやりたいことだらけで、くたばる暇なんてないの。命ある限り撮り続け、沖縄の現状を世界に発信したい」。石川さんは、信じた道を突き進む決意を新たにしている。
(当銘千絵)
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